あの人は今…第27回現音作曲新人賞受賞「山本哲也の伊太日記」〜第1回〜

作曲の山本哲也です。先日こちらで予告した通り、2011年3月18〜22日にイタリア・ミラノで開催された現代音楽祭「Festival 5 Giornate」に参加した際のレポートを数回に渡って連載させていただくことになりました。拙文ではございますがどうぞ お付き合い下さい。

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●第1回「ミラノへ!」

山本哲也

第27回現音作曲新人賞受賞・山本哲也

そもそも何故ミラノに行くことになったかというと、2010年10月4日に開催された第27回現音作曲新人賞本選演奏会において、コントラバスとハープのための《誤謬》が賞を受 けたとき、併せて現音とコラボレートしているCentro Musica ContemporaneaのプレジデントであるRossella Spinosa氏に推薦され、イタリア・ミラノで開催される現代音楽祭「Festival 5 Giornate」に作品が招待されることになりました。昨年現音は創立80周年を迎え、その記念事業の一環で、本選で上演された作品の中から賞の受賞にかかわらず一作品のみ招待される、というものでした。

しかしここで招待となったのはあくまで「作品」のみで、作曲者は「来たければ勝手に来なさいよ」といった待遇。当時21歳の若造は自分の作品が海外で上演された ことなど一度もなかったので、「何事も経験!」と自費での参加を決意しました。
なお、本選演奏会についての中川俊郎氏による批評がこちらに掲載されています。

そんなわけで、音楽祭開催期間である今年の3月18日から22日にかかるように、ミラノへ行くこととなりました。初めての海外渡航だったので、日本 とは異なる様々な文化に触れるという意味でも長期滞在がしたかったのですが、師匠にもついでにパリなんかも回ってくるよう薦められました が、東京で3月15日25日にそれぞれ初演が控えていたので、それの合間を縫うように3月16日から23日までの一週間でスケジュールを組みました。

この余裕のないスケジュールもさることながら、出発の5日前に東日本大震災に見舞われ(そのため15日の初演は延期となりました)、 出発できるかどうかが直前まで危ぶまれるという事態にもなって、さらにスリリングな思いもしましたが、フライト当日に成田空港までの全線が奇跡的に復活、無事空港まで辿り着くことが出来ました。ちなみにそのときの震災関連のニュースはミラノのニュースでもトップで、内容自体はイタリア語なので不明でしたが、「ツナミ」「フクシマ」といったいくつかのキーワードは聞き取れました。

ミラノの梅

「ローマの松」ならぬ「ミラノの梅」(「桜」との説も・・・?)

さて、ミラノは日本でいうと稚内と同緯度ですが気候は比較的温暖です(とはいえ初日から4日間雨だった のですが)。なので、厚手のコートは必要でしたが、念のため持っていったマフラー までは使いませんでした。

滞在したのはミラノ中央駅(Centrale)か らメトロで2駅 のロレート(Loreto)から徒歩8分ほどの安いホテル。このロレートはM1とM2の二つの路線が通っており、これは現地に着いてから分かったのですが、この二路線に今回の音楽祭の会場すべての最寄り駅が含まれており、結果的に大変便利なロケーションでした。そしてホテルのフロントのおじいさんがどことなくメシアンに似ているような気が…。

コミュニケーションの手段は一応英語ですが、これがまたかなり苦手。「イタリアでは英語が通じない」という噂もあったので、一言イタリア語会話の本とミラノのガイドブックを携え、最低買い物と食事くらいは出来るようにいくつかの会話文を飛行機の中で覚えていきました。

というわけで、次回(第2回)から本編に入ります。

 

★次回第2回「フェスティバル前半」近日アップ予定!

第28回現音作曲新人賞は酒井信明さん《Nana》に決定【日本現代音楽協会プレスリリース11/25】

第28回現音作曲新人賞表彰式

後列左から、佐藤昌弘事務局長、山本裕之審査員、近藤譲審査員長、野平一郎審査員、坪能克裕会長、前列左より、富樫康夫人、旭井翔一、渋谷由香、酒井信明、松浦伸吾

2011年11月24日(木)18:00より東京オペラシティリサイタルホールに於いて「第28回現音作曲新人賞本選会」が行われました。

応募総数32作の中から譜面審査を通過した4作を演奏し、審査員長近藤譲、審査員野平一郎・山本裕之による厳正な審査の結果「第28回現音作曲新人賞」に、酒井信明さんの《Nana》が選ばれました。講評、結果発表の後、日本現代音楽協会会長坪能克裕より、賞状と副賞の賞金15万円が授与されました。

審査員が今後に期待する作曲家に贈る「富樫賞」には、渋谷由香さんの《不均等音律による6つの風景2》と松浦伸吾さんの《霧中の紅》の2作が選ばれました(賞状、賞金10万円を分割授与)。「富樫賞」は、音楽評論家、故・富樫康氏の篤志により設立された審査員特別賞で、表彰式において富樫康夫人が副賞を贈呈しました。

また、今回より「聴衆賞」を新設しました。来場者による投票の結果、渋谷由香さんの作品が「聴衆賞」選ばれました。※1

次回「第29回現音作曲新人賞」は、佐藤眞(審査員長)、坪能克裕、福士則夫諸氏の審査員によって開催の予定です。募集テーマは「指定された楽器の任意の組み合わせによる3奏者以内の室内楽作品」です。詳細は2012年2月頃、当協会ウェブサイト www.jscm.net 等で発表致します(第28回の募集要項はこちら)。

 

※1▼インターネット配信のお知らせ

「第28回現音作曲新人賞本選会」の録画VTRをインターネット配信致します。配信日時につきましては後日当協会ウェブサイト www.jscm.net にて発表致します。

当本選会はインターネット生配信を行いましたが、配信開始から約37分後、上演3曲目で電波トラブルが発生しました。バックアップ回線による復旧を試みましたが、以後配信が不安定となりました。

当初、1曲につき1回、画面に「キーワード」を表示し、4曲全てのキーワードを確認して全曲をご視聴頂いた方を対象に「1.記名、2.キーワードの記入、3.推薦理由を明記」する形式による「聴衆賞」のインターネット投票も受け付ける予定でしたが、上記の理由により中止させて頂きました。

 

酒井信明

▼第28回現音作曲新人賞受賞

酒井信明《Nana》作曲2008年/初演
Nobuaki SAKAI/ Nana

三重奏といってもいろいろな組み合わせが考えら れますが、普通の意味では音楽的に調和しがたい と思われる三つの楽器をあえて選ぶことで逆に何か 書けそうな気がしたというのが、この作品を書くは じめの動機だったように思います。 “Nana”とは、たまたま楽章が七つあるから“なな” と名づけました。なにか日本語であることがこの作 品のタイトルにはふさわしいように思います。楽章 が七つあるにもかかわらず演奏時間は比較的短く、 全体で七分程度です。短い楽章は 18 秒程度で、 この短さはこの作品の特徴の一つとなっています。

Profile:1976 年兵庫県生まれ。大阪芸術大学 音楽学科を経て京都市立芸術大学音楽学部作曲専 攻を卒業。松永通温、中村典子の各氏に師事。

 

現音・特別音楽展2011「世界に開く窓〜古往今来」第1部:現音作曲新人賞本選会
2011年11月24日(木)17:30開場/18:00開演
東京オペラシティリサイタルホール

旭井 翔一/水曜日の夢 [作曲2011年/初演]
多久 潤一朗(フルート) 上畠 善男(オーボエ) 永田 由貴(コントラバス)

渋谷 由香/不均等音律による6つの風景2[作曲2011年/初演]
竹内 弦(ヴァイオリン) 藤原 歌花(ヴィオラ) 多井 智紀(チェロ)

酒井 信明/Nana [作曲2008年/初演]
多久 潤一朗(ピッコロ) 星野 沙織(ヴァイオリン) 福井 弘康(バスーン)

松浦 伸吾/霧中の紅 [作曲2011年/初演]
竹内 弦・星野 沙織(ヴァイオリン) 兼重 稔宏(ピアノ)

審査員長:近藤 譲 審査員:野平 一郎山本 裕之

 

★本選会の模様は日本現代音楽協会facebookページにて掲載中。

11月の主催公演(3) 世界に開く窓

世界に開く窓〜古往今来

世界に開く窓〜古往今来

▼現音・特別音楽展2011「世界に開く窓〜古往今来」
2011年11月24日(木)17:30開場/18:00開演
東京オペラシティリサイタルホール

一般券2,000円はケットぴあで販売中(当日券は3,000円)

★学生券はなんと1,000円!お申し込みは下記まで。
電話:03-3446-3506
電子メール:80th (a) jscm.net

 

[第1部] 18:00〜19:00 第28回現音作曲新人賞本選会

旭井 翔一/水曜日の夢 [作曲2011年/初演]
1988年福井県生まれ。東京芸術大学音楽学部作曲科に在籍中。野平一郎、土田英介、徳永崇、篠田昌伸の各氏に師事。
多久 潤一朗(フルート) 上畠 善男(オーボエ) 永田 由貴(コントラバス)

酒井 信明/Nana [作曲2008年/初演]
1976年兵庫県生まれ。大阪芸術大学音楽学科、京都市立芸術大学音楽学部作曲専攻を卒業。松永通温、中村典子の各氏に師事。
多久 潤一朗(ピッコロ) 星野 沙織(ヴァイオリン) 福井 弘康(バスーン)

渋谷 由香/Six Landscapes in Unequal Temperament 2 [作曲2011年/初演]
1981年生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。現在同大学院博士後期課程に在籍中。第19回京都芸術祭新人賞受賞。
竹内 弦(ヴァイオリン) 藤原 歌花(ヴィオラ) 多井 智紀(チェロ)

松浦 伸吾/霧中の紅 [作曲2011年/初演]
1979年生まれ。大阪音楽大学音楽学部作曲学科を経て同大学大学院音楽研究科作曲専攻修了。近藤圭、久保洋子の各氏に師事。
竹内 弦・星野 沙織(ヴァイオリン) 兼重 稔宏(ピアノ)

審査員長:近藤 譲 審査員:野平 一郎山本 裕之
現音作曲新人賞=賞状、賞金15万円 富樫賞=賞状、賞金10万円 21時頃より結果発表、及び表彰式

 

世界に開く窓〜古往今来

世界に開く窓〜古往今来

[第2部] 19:00〜21:00 世界に開く窓〜訳あり??

昨年度より日本現代音楽協会は創立80周年記念の演奏会を催しています。いつもは会員の作品発表が中心となっていますが〈現音・特別音楽展2011〉シリーズではそれに加えて、国内外の様々な作曲家の名作の中から楽器編成ごとに数曲を選んで皆様にお届けすることになっています。シリーズ第1回となるこの「世界に開く窓」ではさらに少し趣向を凝らしちょっと「訳あり??」な作品をいくつかプログラムに入れてみました(「訳あり」と言っても決して「難あり」ではありません!)。これらの作品は「何かの理由で演奏機会が少なくなってしまった名作」に他なりません。どういう理由なのかは是非とも会場で実際に見て聴いていただきたいと思いますが、ともかくこの演奏会、準備がかなり大変であることだけは確かです。プログラムの中には15年に一度くらいしか演奏されないものや、海外ではよく演奏されているのに日本では初めてというもの、再演のための「コンパクト性」など全く考えていないような大胆な曲や、また「音楽作品の上演」そのものについて改めて考えさせられるような曲等々があり、どれも皆様にお伝えしたい、残していきたいと願うような作品ばかりです。事情はさておき、お聴き下さる皆様にはゆっくりとただ楽しんでいただければ嬉しいと思います。 (制作:福井 とも子

ジョルジュ・アペルギス(ギリシャ)/Le corps à corps [作曲1978年] 畑中 明香(ザルブ)

マウリシオ・カーゲル(アルゼンチン/ドイツ)/Schattenkläng [作曲1995年] 上田 希(バスクラリネット)

南 聡/私の遊星気分 [作曲2000年/東京初演] 曽我部 清典(トランペット) 中川 俊郎(ピアノ)

山本 裕之/無伴奏モノ・オペラ《想像風景》 [作曲2000年] 池田 萠(パフォーマンス)

松平 頼曉/What’s next? [作曲1967-1971年] メリ・ニクラ(ソプラノ) 多井 智紀・福井 とも子(パフォーマンス)

スコラダトゥーラ(特殊調弦)は初めて…ヴィオラ藤原歌花/第28回現音作曲新人賞本選会

皆様こんにちは。今回の新人賞で渋谷由香さんの作品を演奏させていただくヴィオラの藤原歌花です。

作曲新人賞の本選会で演奏させていただくのは何回目でしょうか。嬉しいことに何度も演奏させていただいています。毎回同年代の作曲家の方との出会いを楽しみに、そして作品に触れることを嬉しく、さらに「本選会での演奏」という責任を感じながら充実した時間を過ごさせていただいています。

作曲の渋谷さん、そして今回共に演奏するヴァイオリン竹内君、チェロ多井君とは大学の同級生なんです(竹内君は一つ下ですが、おつきあいが長いので同級のノリです)。私が大学に入学し、現代音楽に興味を持ち始め、多井君らとライヒやナイマンを遊び半分?でちょこちょこ弾いたり、作曲科のおさらい会や試験を聴きに行ったり時には演奏したりしているうちに渋谷さんとも知り合って、、、という具合です。

しかし残念なことに今まで渋谷さんの作品を演奏する機会には恵まれず、最近は竹内君や多井君と演奏することもなかなかなかったので今回の本選会をとても楽しみにしていました!リハーサルが2回終わりましたが、リラックス&和やかムードであっという間に時間が過ぎてしまいます。

今回の渋谷さんの作品では、なんというか懐かしい空気感、哀しさ、内省的な激しさを感じます。時折キラッと輝く瞬間もあったり。現代音楽ってなんだろう?と思うことがありますが「音による絵」なのではと。今回の渋谷さんの作品は「6つの風景」ということですが、まさしくそれぞれの風景の色合い、情感が演奏していると見えてきそうな、でもすごく曖昧なようで自分の知っている「何か」を感じさせる不思議な感覚です。スコラダトゥーラ(特殊調弦)は初めてだったので不安がありましたが、この作品ではものすごく自然であり必然的なため弾いていてそれを忘れてしまうほどです。

しかしながら自分の思うことを演奏に表現すること、作品の意図することを正確に演奏することはなかなか難しいものでありますから、全力を尽くして本番に臨みたいと思っています!

 

藤原歌花

藤原歌花

●藤原歌花(ふじわらうたか/ヴィオラ)
東京藝術大学音楽学部附属高校、同大学を卒業。藝大フィルハーモニア団員、兵庫芸術文化センター管弦楽団アソシエイトメンバーを経て、現在東京藝術大学大学院修士課程2年に在学中。同時にオーケストラ、室内楽、現代音楽、ライブ、スタジオワーク等多方面で活動中。

▼現音・特別音楽展2011「世界に開く窓〜古往今来」
[第1部] 第28回現音作曲新人賞本選会
2011年11月24日(木)17:30開場/18:00開演
東京オペラシティリサイタルホール

★一般券2,000円(当日券3,000円)学生券はなんと1,000円!
▼お申し込みは下記まで。
電話:03-3446-3506
電子メール:80th (a) jscm.net

お、これは譜読みに時間がかかりそうだな…ピアノ兼重稔宏/第28回現音作曲新人賞本選会

アイルランド、ダブリンにて。撮影:兼重稔宏

アイルランド、ダブリンにて。撮影:兼重稔宏

新人賞の本選会にて松浦伸吾さんの作品《霧中の紅》でピアノを演奏させて頂きます、兼重稔宏です。

まず初めにスコアを初めに見たときの印象は正直「お、これは譜読みに時間がかかりそうだな・・・」という、非常にネガティブなもの(失礼!)でしたが、アンデパンダン展で浅野藤也さんの作品を演奏し終えゆっくりと読み進めるに連れて、響の変容の中にある動きや静寂、色彩の変化がとても面白く感じられました。

とはいえ難解な作品なので、とても不安な気持ちで初合わせに向かったのですが作曲者の松浦さんのお話を伺ってからは彼のこの作品に対する姿勢がとても率直に伝わるとともに、ヴァイオリンのお二人(竹内弦さん、星野沙織さん)との対話に重きを置けるということで24日に演奏させて頂くのがとても楽しみです。

私事ながら、今後の予定と致しましては新日本フィルハーモニー交響楽団の室内楽シリーズや先輩のチェリストである内田佳宏さんのリサイタルなどで演奏させて頂きます。

室内楽シリーズ新日本フィルハーモニー交響楽団室内楽シリーズ
11月30日(水)19:15開演 会場:すみだトリフォニーホール 小ホール
ドヴォルジャーク/ピアノ五重奏曲 イ長調 op.81
ブラームス/弦楽六重奏曲第1番 変ロ長調 op.18

内田佳宏チェロリサイタル
12月11日(日)14:00開演  会場:青山音楽堂バロックザール
J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007 プーランク/チェロソナタ
内田佳宏/新作 ブラームス/ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調op.108

 

アイルランド、ダブリンにて。撮影:兼重稔宏

よく見るとかわいい「非常口」のピクトグラムが。

▼現音・特別音楽展2011「世界に開く窓〜古往今来」
[第1部] 第28回現音作曲新人賞本選会
2011年11月24日(木)17:30開場/18:00開演
東京オペラシティリサイタルホール

★一般券2,000円(当日券3,000円)学生券はなんと1,000円!
▼お申し込みは下記まで。
電話:03-3446-3506
電子メール:80th (a) jscm.net