第4回「2010年度:創立80周年記念事業Vol.1」
2010年に現音は創立80周年を迎えました。我が国において80年も続いている芸術音楽の作曲家の団体は現音しかありません。戦前からの歴史を持っているわけですから、これはスゴイことです。この記念の年に、国際的な現代音楽祭を、どこかメジャーなホールを借り切って大々的に数日間にわたって催し、オープニングコンサートはフルオーケストラで華やかに幕開け!…なんてやってみたかったですね。しかし現実には、そのようなことはとても実現不可能な状況にありました。
しかし現音は60周年、70周年のときには、そのような数日間に亘る規模の大きい音楽祭を見事にやってのけたのです。60周年のときにはサントリーホール等で〈東京現代音楽祭〉を、70周年のときには横浜みなとみらいホールにて、悲願であった〈ISCM世界音楽の日々〉の日本初開催を果たしたのでした。80周年のときには、派手な花火を打ち上げられるような社会状況にはなく、事務局長を務めてきた5年間で一番歯がゆい思いをしました。
2010年度の現音の三役(会長、副会長、事務局長)は、まず4月はじめに理事の互選で、前年度に引き続き、会長に坪能克裕氏が、事務局長に私が選出されました。坪能氏の会長職は3年目、私の事務局長職は4年目を迎えました。つづいて副会長には、坪能会長の指名で、前年に引き続き松尾祐孝氏が就任し、80周年記念事業の実行委員長もあわせて引受けて頂きました。厳しい時代だからこそ前向きに、大きなことは出来なくとも少しでも新しいことにチャレンジして、ということがわれわれ三役の共通の認識であったと思います。
協会創立80周年記念事業は、2010年度と2011年度の二ヵ年にわたって開催されることが、理事会と総会でそれぞれ承認され、2010年度にその第一弾の記念事業を実施することになり、年間に8本の演奏会を、10月から翌年2月にかけて4ヵ月間に集中開催しました。タイトルは、〈協創 新しい音楽のカタチ―現音・特別音楽2010〉。ネーミングにあたっては、さまざまな紆余曲折があって決して一筋縄で決まらなかったですね。最終的には、何人かの会員からの幾つかのアイデアを混合して、このタイトルが出来上がりました。それだけ企画立案は民主的に行われ、慎重な検討が重ねられていたわけです。
2010年度の一連の演奏会では、朝日現代音楽賞受賞記念演奏会である「篠崎史子ハープリサイタル」と「現音作曲新人賞本選会」をリンクさせて、創立80周年記念シリーズのオープニングコンサートとしたり、現音レジデンスのユース・チェンバー・オーケストラを旗揚げしたり、首都圏公演企画として関西公演シリーズを立ち上げるなど、そこには理事会、創立80周年記念事業実行委員会等からで出た、何人もの会員のいろいろなアイデア、意見が反映されています。唯一“競楽IX”だけは、審査委員長をお引き受け下さった野平一郎会員に完全に主導権をとって頂き、野平氏に、審査委員の選定には現在考えられる最高の布陣をお考え頂き、それらの方々に直接打診までして下さりました。
最後に個人的なことで恐縮です。私が現音に入会したのは、藝大の大学院を修了してから6年経った1996年のこと。入会から4年ばかりは、作品を出品したり、会の運営に参加したりすることはまったくなかったのですが、2000年、2001年の総会に出席したことがきっかけで執行部連に顔も覚えて頂き〈ISCM世界音楽の日々2001横浜大会〉に、インスペクターという形で運営のお手伝いをさせて頂きました。その後まもなく、大会で携わった仕事についての報告をするようにとの、当時の事務局長で横浜大会の実行委員長であった松尾祐孝現副会長の指示で、初めて現音委員会(現在の現音理事会)にお邪魔しました。
それからは松尾氏の推薦によりオブザーバーという形で、いつのまにか末席で毎回委員会に参加するようになり、やがて、当時の委員長(現在の会長)であった松平頼暁名誉会員のご指名で、「現音・秋の音楽展2002」の制作担当らしきものをやらせて頂き、加えて同音楽展で現音初出品をしました。ハープとピアノのデュオの新作で、ゲネプロが終わるや否や「イイ響きしていたよ」と私を励まして下さったのが、坪能克裕現会長でした。私のこの現音初出品曲は、8年後に、前記の創立80周年記念シリーズのオープニングコンサートで、篠崎史子さんのハープと木村かをりさんのピアノで再演されたのでした。
(つづく)
★次回第5回「2011年度:80周年記念事業Vol.2」
更新は3月30日(金)です。お楽しみに!
《2010年度の現音演奏会・全8公演》
◆協創 新しい音楽のカタチ―現音・特別音楽2010
・『創立80周年記念シリーズ オープニングコンサート~現代ハープ音楽の領域』
2010.10/4 東京文化会館小ホール
第1部:第27回現音作曲新人賞本選会
【審査員】糀場富美子(長)北爪道夫 松平頼暁
【オブザーバー】篠崎史子 ロッセッラ・スピノーザ
【新人賞】山本哲也
【冨樫賞】該当者なし
第2部:篠崎史子ハープリサイタル 第17回朝日現代音楽賞受賞記念演奏会
【共演】木村かをり 篠崎和子 山口恭範
・『アンデパンダン展第1夜』
2010.11/5 東京オペラシティリサイタルホール
・『アンデパンダン展第2夜』
2010.11/10 東京オペラシティリサイタルホール
・『第9回現代音楽演奏コンクール“競楽IX”本選会』
2010.12/12 けやきホール
【審査員】野平一郎(長) 木ノ脇道元 篠崎史子 菅原 淳 田中信昭 堤 剛、
坪能克裕 原田敬子、吉村七重
【第1位・第20回朝日現代音楽賞】山田 岳(ギター)
・『室内オーケストラの新地平』
2010.11/30 めぐろパーシモンホール大ホール
・『上田 希リサイタル 毒っとクラリネット』
2010.12/20 ムラマツリサイタルホール新大阪
・『フュージョン・フェスタII』
2011.1/21 洗足学園前田ホール
・『世界に開く窓~ISCM“世界音楽の日々”を中心に~西欧特集』
2011.2/26 日本大学芸術学部音楽小ホール