現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜若林 かをり(フルート/ピッコロ)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
若林 かをり(フルート/ピッコロ)Kaori WAKABAYASHI

▼本選演奏曲
若林千春/うつ…原響 I(2001)
Franco DONATONI/NIDI(1979)

 

“競楽X”本選への出場の機会をいただけましたこと、大変嬉しく思っています。
留学という経験を通して、日本にいる頃よりもさらに「私は日本人である」ことを体感し、邦人作品の演奏への興味がより一層強くなったことが、今回、邦人作品の演奏に重点を置いているこのコンクールに挑戦するきっかけとなりました。
本選で演奏させていたく2つの作品は、どちらも私にとってとても魅力的な作品です。
若林千春作品「UTU…原響 Ⅰ 」は、私のそれまで持っていたフルートに対するイメージを変えてしまった作品です。作品の核となる“レ”の音をめぐって、フルートという楽器の新たな可能性を存分に引き出していて、それは同時に、奏者や聞き手の想像/創造力を試されているようにも感じます。
ドナトーニ作品、題名の「NIDI」はイタリア語で「巣」という意味です。まるで鳥たちが巣の中で繰り広げる、ちょっと異常で多動な鳥世界の様子が目に浮かんでくるような作品です。
聴いて下さる皆さまにも、それぞれの作品の魅力を“音”をとおして感じていただけるような演奏ができればと思っています。

◎プロフィール
東京藝術大学音楽学部卒業。(財)ローム・ミュージック・ファンデーションの奨学生として2009年秋より渡仏。2012年ストラスブール音楽院スペシャリゼーション課程(マリオ・カローリクラス)を修了。今年3月、同音楽院において震災メモリアルコンサート『Vers TOHOKU』を企画・開催し、邦人作品と即興演奏によるプログラムは話題を呼んだ。現在、(財)平和堂財団海外留学助成を得て、ルガーノ音楽院に在籍。2009年NHK-FM『名曲リサイタル』出演。http://fluteusagi-kawori.cocolog-nifty.com/

 

▼第一次予選演奏曲
Franco DONATONI/NIDI(1979)

▼第二次予選演奏曲
細川俊夫/垂直の歌 I(1995)
Salvatore SCIARRINO/CANZONA DI RINGRAZIAMENTO(1985)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜マクイーン時田 深山(十七絃箏)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
マクイーン時田 深山(十七絃箏)Miyama MCQUEEN-TOKITA

▼本選演奏曲
高橋悠治/橋をわたって(1984)

 

私は4年近く前にオーストラリアから東京に引っ越してきました。オーストラリアではほとんど他の箏奏者はいなく、レッスンのために飛行機に乗らないといけない状況でした。東京に来たのは、邦楽の現場で他の奏者とふれあい、日本でしか学べない事や見れないこと、聴けないことに触れて、自分の音楽に磨きをかけるためでした。
日本に来て色々な場で演奏して、その中で箏曲や邦楽専用のコンクールにも出場してきましたが、思ったよりも、海外と同じように日本でも箏は演奏者や作曲者に特別視されていることがまだあるということに気づきました。今回「競楽」のコンクールで、他の西洋楽器と並んで、ただ現代曲を表現する楽器として箏で出場して演奏できることをとてもうれしく思っています。それだけでなく、立派な世代の審査員の先生方に演奏をみていただけるということも、大変貴重な経験だと思っています。
今回本選で演奏させていただく曲《橋をわたって》は、何年も前からオーストラリアで聴いていました。私の師匠の師匠にあたる沢井一恵先生の高橋悠治氏への委嘱作品ばかりのアルバムの中の一曲で、大好きな曲でした。でもその時学生だった私は、まさかこんな爪をつけずに素手で激しく十七絃の曲を私が、しかも日本で演奏する日がくるとは思いませんでした。今でも大好きな《橋をわたって》、精魂込めてお届けしたいと思います。

◎プロフィール
7歳から筝を学び、メルボルンとシドニーで小田村さつきに、東京で沢井一恵に師事。2008年インド映画「The Japanese Wife(日本人の妻)」の音楽で、箏と歌を担当。2008年にモナシュ大学音楽学部及び文学部卒業以来、日本に活動の拠点を移す。NHK邦楽技能者育成会第55期首席卒業。沢井箏曲院教師。現在文部科学省奨学金により、東京芸術大学院音楽研究科所属。第15回賢順記念箏曲コンクール奨励賞受賞。第7回ルーマニア国際音楽コンクール室内楽部門1位・日本ルーマニア音楽協会理事会賞・オーディエンス賞受賞。

 

▼第一次予選演奏曲
高橋悠治/橋をわたって(1984)

▼第二次予選演奏曲
松村禎三/幻想曲(1980)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜木埜下 大祐(フルート)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
木埜下 大祐(フルート)Daiske KINO-SHITA

▼本選演奏曲
佐原洸/パラジウム(2012)*ピアノ伴奏付き

 

皆様こんにちは。フルートの木埜下です。今回私が演奏する佐原洸の《Palladium》は今年初演された新しい作品ですが、音楽性と、新しい技術(例えば、フラッタータンギングと指を合わせる、など)が見事に融合したとてもユニークな曲です。さまざまな音響と音楽が必然性をもって一体化していく様子を楽しんでいただければと思います。

◎プロフィール
1977年金沢市生まれ。洗足学園魚津短期大学、同研究科、桐朋オーケストラアカデミー、ハンブルク音楽院(石川県芸術インターンシップ在外研修員)、ブレーメン芸術大学を卒業、修了。これまでフルートを小泉浩、ユルゲン・フランツ、ハリー・シュタッレフェルト、ヘレン・ブレットソー、マリオ・カローリの各氏に師事。グイヤンシンフォニーオーケストラ首席フルート奏者を務めた後、ソリストに転出、現代音楽を中心に幅広いジャンルで活躍している。現代音楽演奏コンクール競楽に4度の入選(内2度の審査委員特別賞)の他、入賞多数。現在、アジア同時代音楽協会(ADOK)会長、平成24年度トーキョーワンダーサイト国内交流クリエーター、福山平成大学非常勤講師。
▼第一次予選演奏曲
武満徹/ヴォイス(1971)

▼第二次予選演奏曲
Brian FERNEYHOUGH/カサンドラの夢の歌(1970)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜佐藤 祐介(ピアノ)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
佐藤 祐介(ピアノ)Yusuke SATO

▼本選演奏曲
権代敦彦/無常の鐘 ピアノのための(2009)
鈴木純明/”Impromptu” pour piano solo(2007)

William BOLCOM/Nine Bagatelles(1996)

 

一般的に、ピアノの分野では現代音楽は特別なカテゴリーに捉えられている場合が多いと思います。

たしかに現代音楽はアカデミックかつ難解な作品が多いことは否めません。
しかし私は、多少表現の形は違えど、バロックやクラシックなどの慣れ親しんだ音楽の延長線上にあるものだと思っています。なので、この「競楽」でも、ごく普通に私自身の音楽を表現するために、現代音楽という台本を借り、バッハやシューベルトなどの名曲を演奏する時となんら変わらない気持ちで予選のプログラムを演奏しました。
その結果、ファイナリストになることができ光栄に思います。
本選会では、三人の個性的な作曲家達の作品を自分自身の言葉で表現したいと思います。

◎プロフィール
福島県出身。12歳よりピアノを始め、15歳でデビューリサイタルを開催。UFAM国際音楽コンクール第2位、三善晃ピアノコンクール、チェコ音楽コンクール第1位。第15回浜松国際ピアノアカデミーにおいて、中村紘子等のマスタークラスを受講。昭和音楽大学コンチェルト定期演奏会のソリストに選抜されプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番作品16を演奏。現在、大森ひろみに師事。これまで、故安藤友候、江口文子、杉谷昭子、平間百合子、藤原由紀乃、本尾かおる、柳川守に師事。

 

▼第一次予選演奏曲
Einojuhani RAUTAVAARA/Piano Sonata No.2 “The fire sermon” op.54

▼第二次予選演奏曲
Henry MARTIN/24 Preludes and Fugues No.3 D♭major(1990)
権代敦彦/無常の鐘 ピアノのための(2009)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介〜原田 真帆(ヴァイオリン)

現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
原田 真帆(ヴァイオリン)Maho HARADA

▼本選演奏曲
松下功/ヴァイオリン・ソロのための「マントラ」(2001)

 

本選で演奏いたします『マントラ』は、わたしの師匠である澤先生が初演した曲です。序-破-急の3つの部分からなる曲に合わせ、舞台には5台の譜面台が3種類の奥行きで配置されます。奏者はヴァイオリンを弾きながら歩いて移動し、すべての譜面台と向き合い、最後にはそれらに囲まれて弾きます。
この曲は空海が大陸から持ち帰った密教の修法「護摩業」をもとに作られています。護摩業は燃えたぎる炎を前にして真言(仏の言葉)を唱え続ける厳しい修行で、炎の温度は300度にも及ぶそうです。マントラとはサンスクリット語で讃歌・呪文といった意味で真言のことを指し、ここでは不動明王の真言をリズム・モティーフとして、煩悩の数と同じ108回刻まれます。
人生の長く苦しい時間の中で、一瞬でも苦悩から逃れたい──。そんな祈りが込められた『マントラ』。自分の心と誠実に向き合って、今のわたしなりの真言を見つけたいと思います。
今回演奏するにあたり、お話を聞かせてくださった松下先生、ご指導くださった澤先生に感謝いたします。

◎プロフィール
栃木県生まれ。3歳よりヴァイオリンを始める。2012年3月東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業、現在同大学器楽科1年在学中。澤和樹氏に師事。

 

▼第一次予選演奏曲
池辺晋一郎/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1・2楽章(1965)

▼第二次予選演奏曲
Witold Lutosławski/Partita/パルティータ(1984)