第30回現音作曲新人賞受賞の言葉 伊藤巧真
《ものろ・雲・のろぐ》(2013)[編成:Bariton, Tuba]
この度、念願叶って現音作曲新人賞を受賞することができ、大変嬉しく、とても光栄に思っております。まずは感謝の言葉を述べさせていただきたいと思います。深いテーマを与えて下さり、全ての作品を審査していただいた末吉先生、藤井先生、名倉先生、私の作品に命を与えて下さった低音デュオの松平先生、橋本先生、ゼロから作曲を教えて下さった嶋津先生、これまで私の活動を支えてくれた家族、多くの友人たちに心から御礼を申し上げます。さらに、日本現代音楽協会の関係者の方々には本選会のために多くの御助力をいただきました。おかげさまで貴重な体験をすることができました。本当にありがとうございました。
受賞の感動と共に、今、はっきりと身の引き締まる想いがあります。2011年の冬の終りに、一人では受け止められないほどの強烈な衝動(そして、それは問いのようなもの)に駆られてからは、それに対する答えを無理矢理に吐き出していくかのように、夢中で作曲に取り組んで参りました。しかし、今回の作品が音として実現していく過程の中で、過去の衝動に隠されてしまい、見過ごしてしまっていた“自分に足りないもの”の存在に気づくことができました。
私たちは若い世代だからこそ、何事も恐れを知らずにチャレンジしていくことができます。もちろんこれは、作曲だけに限った話ではないと思います。しかし私の場合、今までのことを振り返ると、ただ単に無知であったからこそ成し得たチャレンジばかりだったのかもしれません。これまで、あまりにも目先のこと、あるいはその少しばかり先の未来だけを追い求め過ぎていたのではないかと反省しております。今回の受賞をきっかけとして、改めて過去の伝統的な作品を振り返っていくなどの冷静な学びが、将来の自分のためには必要不可欠となってくるだろうと感じました。恥ずかしながら、今になってあたりまえのことに気づいたということです。
最後に、作品を聴いて下さった方々に心から感謝の気持ちを述べたいと思います。皆様からも多くの課題をいただいたと思っております。現音作曲新人賞の名に恥じぬよう、これからも高い意識を持って、作曲家としての素養をより高めて参ります。
第30回現音作曲新人賞受賞の言葉 川崎真由子
《ピアノ~小笠原鳥類の詩による~》(2013)[編成:Soprano, Bass Clarinet]
このたび、東京オペラシティという素晴らしい舞台で拙作を演奏していただき、そしてこのような賞を頂きましたことを大変光栄に思います。審査員の先生方、演奏者のお二人をはじめ、関係者の皆様方、お越しくださいました皆様方、そして今回作曲にあたり強烈なインスピレーションを与え、快く詩を提供してくださった詩人の小笠原鳥類さんには心から感謝申し上げます。
私自身が聴きたい音楽を純粋に書き連ねた楽譜は、さぞかし演奏しにくい部分もあったと思われますが、ソプラノの太田真紀さんとバス・クラリネットの菊地秀夫さんが真摯に演奏に取り組んでくださり、楽譜から音楽を作っていく過程はお二人から学ぶところが多々あり大変有意義なものでした。そして本番では、自分の聴きたい音楽を素晴らしい演奏で聴くことができ、また実際に音にされることによって新たな発見もあり、至福の時を過ごすことができました。やはり、演奏家の協力があってこそ作曲家は音楽ができるということを、改めて実感いたしました。しかしそれと同時に、自分の至らなさも痛感いたしました。
また今回の本選会では、審査員の先生方の作品も含め様々な歌を聴くことができ、歌の多様性、歌の在り方、そして「日本語を歌う」ということの可能性や難しさ等、「歌」について改めて考えを巡らす機会となりました。この機会に得た課題や収穫を糧に、今後もより一層の精進を重ねて参りたいと思います。
▼第30回現音作曲新人賞審査結果はこちら。