震災義援音楽配信プロジェクト「ヒバリ」

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日本国内のみならず世界各国の現代作曲家と連携して、東日本大震災の被災者のためにネット配信を利用した新しい形のチャリティー・プロジェクト「ヒバリ」を始められたmmm…(エムエムエム・スリードッツ)の演奏家メンバー3人にお話を伺ってきました。

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現代音楽を専門とするユニットとして最近活躍目覚ましいmmm…については既にご存知の方も多いと思われますが、共に「競楽」の優勝者として朝日現代音楽賞の受賞者でもあり、日本現代音楽協会の様々な演奏会でもお馴染みのフルーティスト間部令子さんとピアニスト大須賀かおりさん、そして〈現音・特別音楽展2010〉での熱演が記憶に新しいヴァイオリニスト三瀬俊吾さんという演奏家3人に、カナダ出身で日本在住の作曲家ダリル・ゼミソンさんが加わって活動していらっしゃいます。mmm…の定期公演シリーズである「ともだちのわ」は、世界各地の現代作曲家が、友人の作曲家とその作品を国境を超えてリレーの様に紹介して行き、彼らからmmm…に届けられた作品については「どのようなな作品がきてもとにかく演奏する(三瀬さん・大須賀さん)」、つまりは主催者である演奏家がプログラムの選曲権を自ら放棄するユニークな企画として、大きな注目を集めています。

今回、震災被災者のためのチャリティとして考え出された「ヒバリ」プロジェクトは、震災直後より殆どの演奏会がキャンセルされ、演奏会場もその多くが閉鎖されて音楽界の日常が失われた状況の中で、「自分たちに一体何が出来るのか?」という問いの中から、ユニットのリーダーである間部さんが思いつかれたのだそうです。そしてそれは、前述の「ともだちのわ」というmmm…と世界中の作曲家の間に広がるネットワークを十二分に活用しつつ、その意図に賛同する国内外の100人の友人現代作曲家からそれぞれ3-4分程度の新作や未発表曲を提供してもらい、それらをmmm…が録音、ネット配信することによって義援金を募るというものでした。そしてその趣旨に賛同するジパング・プロダクツが録音と楽曲配信に無償で協力する他、デザイナーから調律師に至る多くの賛同者を得てプロジェクトは動き始めました。

このプロジェクトのオリジナリティは「単なるチャリティだけではなく同時に文化交流でもあり、プロジェクトを通じて世界と日本の作曲家が心を一つにする(間部さん)」というその性格にあります。また現実社会と自らの芸術を通してどう関わって行くかという問題を抱える多くの現代作曲家に、社会の側にも芸術家の側にも共に有意義な機会を提供し得る企画として、注目に値する企画なのではないかと思われます。実際、少なくない演奏家が国内外で多くのチャリティ・コンサートを既に実施していらっしゃる(実際メンバーの三瀬さんも滞在先のフランスでこうしたチャリティ・コンサートに参加されたそうです)のは周知の事実ですが、現代作曲家がこのような災害と被災者に対してどのような貢献が出来得るのかという疑問は、当協会会員作曲家や多くの皆さまが共有なさった想いなのではないかと思います。そのような中で今回のmmm…のチャリティ・プロジェクトは、現代作曲家が普段の創作活動やそのポリシーを何ら曲げることなく、同時に社会に貢献することが可能な試みとして画期的なものと言えるのではないでしょうか?

mmm…の元には既に多くの作品が世界中の作曲家から寄せられ、その中には少なくない数の現音会員の作品も含まれるということです。6月よりは録音も逐次始まり、この度いよいよネット配信が始められました。震災とその後遺症に今なお苦しめられている日本の被災者と、世界に広がる現代音楽界を結ぶmmm…のチャリティ・プロジェクト「ヒバリ」を、当協会としても是非応援して行きたいと思いました。このプロジェクトについての詳しい情報についてはこちらをご参照下さい。

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深澤舞*ボストン便り (7)

ボストンの紅葉

ボストンの紅葉

ボストンも紅葉が見頃で、街全体が美しく秋色に染まっています。マーケットにはリンゴやクランベリー、そしてハロウィンに向けて巨大なカボチャが並び、これから10月のハロウィン、11月の感謝祭、12月のクリスマス・・と、寒さと共にお祭りムードが高まってくる時期です。

昨年末まで1年半、バークリー音楽院でFilm Scoringを専攻していたのですが、授業内容はもちろんのこと、授業以外にも様々に勉強になることがありましたので、少しずつ書かせて頂けたらと思います。

1. カリキュラム
私はディプロマコースに在籍していたのですが、ディプロマコースも大学コースと同じようなカリキュラムがしっかりと決まっていました。専攻したいコースに進むために、必修の授業を履修するか、該当する免除試験に受かることが必要でした。(音大出身者は初めから免除される授業もあります) 日本とイギリスで私が学ばせて頂いた大学卒業後のコースは、専攻の個人レッスンやグループレッスン、ワークショップなどが中心だったのですが、こちらは皆がソルフェージュや和声、理論など、基礎的なことを改めてきっちり学んでから各自の専攻に分かれていくようになっています。確かにバークリーは様々な国から、あらゆる音楽のバックグラウンドを持った学生さんが集まっているので(留学生は1/4近くを占めるそうです)、1度皆で共通の音楽言語を共有することの大切さを実感しました。美大でも、イギリスの大学院は実践・制作中心なのと違って、アメリカでは大学院も基礎のデッサンから学ぶと聞いたことがありますので、アメリカの単科大学院にはそうした傾向もあるのかもしれません。

バークリー音楽院

バークリー音楽院

2. 入学試験
入試は、大学コースもディプロマコースも共通の内容で、願書・小論文の提出、その後に実技オーディションと面接でした。実技オーディションは各自の専攻の楽器で行われ、自由曲/自作曲(がある受験生のみ)/初見(大譜表・コードネーム)/リズム打ち/弾き返し(先生が弾いたものと同じものを弾き返す、聴音に該当するようなものでした)の5つで行われました。また、入学後に4つの試験(Arranging/Ear Training/Harmony/Music Technology)があり、それぞれ4段階のクラスに振り分けられます。

3. コース
学期は4ヶ月ごとに、春、夏、秋学期と分かれており、次の学期も継続して登録するか、翌学期は休みにするかなど、各自に委ねられています。(普段は自国でお仕事をしており、毎年長めに夏休みをとって、夏学期に履修にしにくる方もいました) 3学期目の終わりまでには自分の専攻を決めて申請します。専攻はComposition、Electronic Production and Design、Film Scoring、Music Education、Music Production and Engineeringなど、12コース用意されています。また、専攻とは別に楽器の個人レッスンも必修です。学期のちょうど折り返しの頃にMidterm、学期末にFinalと、2回の試験週間があります。提出、演奏、試験など形は様々ですが、この時期は図書室もコピー室もコンピュータールームも大混雑。皆楽譜や楽器を持って、忙しくも元気に駆けまわります。作曲/編曲作品の音源を提出する課題もあるのですが、このためにproject bandという演奏専攻の学生さんたちと、Music Engineeringを専攻し、録音技術を磨いている学生さんたちが予約制で録音スタジオで待機してくれています。こちらも興味深いシステムでしたので、また次回、このproject bandや授業について書かせて頂きます。

最後に、先日教えてもらったBobby McFerrinのステキな動画を・・♪

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(2011.10.22.)

ファロス財団国際現代音楽祭レポート(前編) 〜会員:深澤倫子

音楽祭ポスターの前で

音楽祭ポスターの前で

去る9月11日~18日、キプロス共和国の首都ニコシアで行われたファロス財団第3回国際現代音楽祭へ、主人である今堀拓也の作品初演を聴きに行った。

北ニコシア(レフコシャ)のモスク。南はギリシャ正教、北はイスラム教である

北ニコシア(レフコシャ)のモスク。南はギリシャ正教、北はイスラム教である

キプロスはギリシャ系民族からなる、四国の半分程の大きさの地中海の島国である。しかしその北半分はトルコ系民族が実行支配し、独立国家「北キプロス」を主張している。もっともトルコ共和国のみが承認するが日本をはじめ世界の国々には認められておらず、未承認国家となっている。今回我々が行ったのはもちろん南側のキプロス共和国のほうだが、首都ニコシアではチェックポイントでパスポートさえ見せれば、分断ラインを超えて「北側」にも自由に入ることが出来たし、北の別の町も観光することも出来た。北に入った途端に民族、言語、文化、宗教ががらりと変わるという、分断国家の現状に触れた貴重な体験であった。イスラム教モスクの礼拝、ギリシャ正教会のミサも見学させてもらい、それぞれの祈りを目の当たりにしたことも印象的であった。

この演奏会はキプロスの他にも、マレーシア(タズル・イザン・タジュディン/第21回現音作曲新人賞受賞者)、ギリシャ(パナヨティス・ココラス)、韓国(スンジー・ホン、在ギリシャの女性作曲家。ココラス氏夫人)、ロシア(ドミトリ・コウリャンスキ/本人不参加)、アメリカ(ジョシュア・ファインバーグ、およびクリストファー・トラパニ/本人不参加)、日本(今堀拓也)、などといった多彩な国の30代を中心とした若手作曲家に、様々な楽器の組み合わせのトリオを条件に新曲を委嘱するというコンセプトを持っている国際音楽祭である。音楽監督はキプロスの若手作曲家で入野賞の受賞経験もあるエヴィス・サムーティスが務めている。

演奏団体は初日がヴォーカル・アンサンブルのEXAUDI、2日目以降は器楽で、地元キプロスの兄妹トリオIAMA、ベルギーのMusique nouvelle、ロシアのMoscow Contemporary Music Ensembleがそれぞれ演奏した。

オーナーのガロ・ケヘラン氏はブラジル国籍で(彼は9月20日に在キプロス仏大使館より、レジオンドヌール勲章を贈られている)、ニコシア市内と郊外のオリーブ林の中にそれぞれ私邸、と言うにはあまりにも大きなコンサートサロンを備えた立派な建物を構えており、初日はオリーブ林の野外ステージ、2日目以降は市内のShoe Factoryでコンサートが行われた。このShoe Factoryはその名の通りかつて靴工場であり、1974年の南北分断戦争で爆撃された多くの建物跡の瓦礫がそのまま分断ラインとなって放置されている、その中の一つをリニューアルし、立派に仕上げたものである。美しい建物の陰に、戦争の悲劇を感じずにはいられない。

初日オリーブ林でのコンサート

初日オリーブ林でのコンサート

注目作品はまず、ロシアのドミトリ・コウリャンスキのヴォーカル・トリオのための新作Voice-offで、特殊奏法を駆使する彼の作品らしく、声に限らず口腔の様々な音を取り入れていた。地元キプロスの音楽監督エヴィス・サムーティスはオノマトペと題した作品だが、オノマトペよりはシラブルの差異に重きを置いた作品。いずれにせよ言葉の意味を削いで発音の音響のみで構成した意欲作である。

つづく——

★後編は10月28日(金)にアップします。お楽しみに!

赤石直哉/松井直之デュオコンサート〜会員:赤石直哉

赤石直哉/Fantasia III

赤石直哉/Fantasia III

昨年のアンデパンダン展での共演をきっかけにデュオコンサートを企画しました。読売交響楽団ヴィオラ奏者の松井直之氏と自作を含めた様々な時代の作品を演奏します。その動画配信も行う予定です。

アンデパンダン展では毎年新作を発表させていただいておりますが、その後の再演をどのような形で行っていくのかが課題だと思います。今年は制作担当ということもあって色々と考えを巡らせています。

 

▼赤石直哉/松井直之デュオコンサート

10月25日(火) 渋谷 公園通りクラシックス

【出演】松井直之 (viola) 赤石直哉 (piano)
【開場/開演】19時00分/19時30分
【料金】3,500円 (予約3,000円/前日まで)

 

【曲目】
シューベルト/アルペジョーネソナタ
ヒンデミット/ヴィオラソナタ Op.11-4
ラフマニノフ/ヴォカリーズ
赤石直哉/ファンタジア Ⅲ

【ご予約・お問い合わせ】
tel. 03-3464-2701 17:00以降 公園通りクラシックス(月曜定休)まで、またはブログ内メールフォームからご連絡ください。

※ライブハウスでの演奏会ですので、チケットの取り扱いはありません。

福士則夫のチビテッラ日記〜第12回〜

●第12回「最後の遠足」

24日(木)は、いよいよワイン工場。と思ったらまずはトスカナ地方で最も古い教会のあるモンテプリツァーノから始まる。ここでまた例のガイドが活躍。説明の途中に逃げ出し、一人離れて教会の回りを散策していると、自由をモットーにしているアメリカ人ベスもデーヴィーもやはり勝手に気ままにうろついていた。昼食は木陰でインターンが作ってきたサンドウィッチと昨日の残りのパスタとワイン。小休止の間にざっと町を見物。

鐘撞き王子?

鐘撞き王子?

この小さな町にしては意外にもしゃれた革鞄の店に釘付け。色の使い方、特にそのカラーのコントラストが素晴らしくまさにイタリアン。多分革製品で有名なフィレンツェの方がいろいろ物色できるだろうとも思っていたが、値段の安さにも引かれて娘のプレゼントにショルダーバックを包装してもらう。次の目的地は今いる町よりさらに小型にした町ピエンザ。10分もあれば町を一回り出来てしまうのに1時間以上も自由時間になり、歩いているとそこかしこで誰かと鉢合わせする。しゃれたカフェーもなく小さな公園の木陰で暇を潰す。5時過ぎにこの日に雇ったらしい運転手付きのバスに乗り込み、いよいよワイン工場のあるモンタルチノに向け出発。

説明はいいから早く呑みたい。

説明はいいから早く呑みたい

途中、運転手は道を何度も通行人に聞きながらBARBIという古い歴史を持つ比較的小さなワイン工場にようやく到着。ガイドが熱心に喋っている内容をジェシカが時々フランス語で訳してくれるのだが、まだら模様にしか理解出来ない。理由は早く試飲したい気持ちが先立っていて話も上の空。30分もかけて説明が終わった後いよいよワインにありつく。2003年と2006年のワインが提供されたが03年の方が熟成していて断然良かったが値段も25ユーロで結構良い値段である。

日も暮れ始めた頃、屋外にテーブルが用意されたレストランで生ハムの盛り合わせから始まりグラタン、ステアリブ、チーズ、ケーキにカモミールティー。又もや肥満の心配が頭をかすめ、そうだ明日は朝食抜きにしよう。帰りは道を間違えたらしくバスから降りたのは深夜。もっともその時間帯は日本が朝を迎える時でもあり、タイミングよく日本を出発する前のカミさんと話をする。 こちらに家内とやってくる長女がユーロスターのチケットを入手するためPCでいろいろ検索しているらしい。ガンバレお嬢さん。疲れ果ててベッドに潜り込む。

ディナーは屋外でフルコース

ディナーは屋外でフルコース

★次回連載最終回!!「さようなら」予告

7月25日(金)は卒業式。このセッションは60日間4期に分かれていて、4月に始まり10月末まで延べ毎年30人ほどの芸術家が招聘され我々は2期目に当たる。時期としては4期の中で最も良い季節かもしれない。城の鐘の音を合図にディレクターであるダーナの家の庭先で城のスタッフも全員参加するレセプションが始まる…

更新は10月26日(水)です。お楽しみに!