佐藤昌弘事務局長回顧録―2007→2011 最終回「2011年度:80周年記念事業Vol.2」

第5回・最終回「2011年度:80周年記念事業Vol.2」

この連載ブログも最終回を迎えましたが、今回は、2011年度についてお話したいと思います。2011年度の現音の三役は、まず4月はじめに理事の互選で、前年度に引き続き、会長に坪能克裕氏が、事務局長に私が選出されました。坪能氏の会長職は4年目を迎え、一方、私の事務局長職は連続5年となり、定款により任期は今年度いっぱいとなりました。私は事務局長最終年ということを意識して、ここ10年で初めて作品を出品せず、運営に徹することにしました。続いて副会長には、坪能会長の指名で、福士則夫氏と松尾祐孝氏のお二人が就任しました(松尾氏は80周年記念事業の実行委員長も兼務)。この三役のメンバーは、私が事務局長に初めて任ぜられたときの三役と同じメンバーで、当時は会長が福士氏、副会長が坪能氏と松尾氏でした。

2011年度は、二ヵ年に及んだ協会創立80周年記念事業の第二年で、とりわけ目玉となった企画は〈新しい音楽のカタチ 軌跡と未来 2daysコンサート〉と銘打った音楽祭でした。共催は朝日新聞社で、2012年の1月21日、22日の両日に亘り、浜離宮朝日ホールで開催されたことは記憶に新しいところです。本公演は、管楽器を中心とした室内楽、コンピュータ・ミュージック、ヴォーカル・アンサンブル(先日、第21回朝日現代音楽賞を受賞した西川竜太氏の指揮!)、ピアノ・デュオ、弦楽器を中心とした室内楽、といった5つの演奏会で、さらに、これら5公演中2公演のチケットをお買い上げ頂いた方々と現音会員だけが来場出来るボーナスコンサートが付きました。この音楽祭のコンセプトは「軌跡と未来」という副題にもあるように、1945年以降の現代音楽の軌跡を今一度振り返り、若い世代に伝えて行きたい国内外の現代作品を選りすぐって上演し、あわせて、未来へ向けた創造を意識した作品を会員より募って初演、再演することで、 現代音楽の歴史の俯瞰とこれからの可能性を示すというものでした。

「若い世代に伝えて行きたい国内外の現代作品」の上演曲の選定については、そのための小委員会を編成し、様々な検討を重ねて俎上にあげた曲を、さらに80周年記念事業実行委員会、現音理事会の双方の議場で熟考し決まりました。音楽的価値と歴史的重要性が大変あり、しかも近年演奏されることが珍しくなりつつある作品、ということが選定上のポイントでしたが、諸々の条件に照合して、止むを得ず上演を見送った作品があったことが残念でなりません!

2daysコンサートの最終公演「室内楽II」の最後演目は、松平頼暁理事の企画・作曲、中川俊郎理事のピアノ独奏による、「日本現代音楽協会会員80人のワンアタック素材による80周年記念ピアノ作品」の初演でした。この作品でのピアノのためのワンアタック素材は、単音あり、和音あり(中にはアシスタントが必要な程の音数のものも!)、クラスターあり、頭突き(!!)ありと様々。現会員から58名のワンアタックの提供があって、これに元会員の故人17名(1930年の創立時メンバー16名、ISCM音楽祭に日本支部推薦として初入選した1名、歴代委員長より5名)のそれぞれの作品から松平氏がワンアタックを抽出・引用して、かくて総計80のワンアタック素材が勢揃いし、松平氏の手で作品化したのでした。これは、過去と現在の現音会員による「合作」に他ならず、その初演は大変感動的でありました。この記念作品では、まさに80人の現音作曲家がワンアタックによって手と手をつないで「協創」し、「未来をつむぐ」ことをしたのだと思います。

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今回の80周年の記念事業は、60周年や70周年記念事業の規模に比べて小振りであったかもしれませんが、記憶に長くとどまる音楽祭、記念年になったと思います。

そもそも作曲とは個人プレイです。一人ですべての音を編み出し、作品を作る…。本来は孤独な作業を続けている作曲家という人種が、個人の工房から出て、表現の方向性も作風も主義主張も異なるさまざまな作曲家と手を取り合い、社会に向けて、80年もの長きにわたって創造的発信を続けているということに、私はとてもかけがえのないもの覚えます。そして、現音の会員であることに誇りを感じるのです。

5年間、私、および、日本現代音楽協会を支えて下さった全ての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

(おわり)

■2010年度の現音演奏会

●現音アンデパンダン展全2夜
・第1夜 2011.11/8 東京オペラシティリサイタルホール
・第2夜 2011.11/9 東京オペラシティリサイタルホール

●現音・特別音楽2011

◆世界に開く窓~古往今来
2011.11/24 東京オペラシティリサイタルホール
・第1部:第28回現音作曲新人賞本選会
【審査員】近藤 譲(長)野平一郎 山本裕之
【新人賞】酒井信明
・第2部:世界に開く窓~訳あり!?

◆新しい音楽のカタチ―軌跡と未来 2daysコンサート 第1日
2012.1/21 浜離宮朝日ホール音楽ホール/小ホール(※)
・室内楽I ―winds― with JSCMユース・チェンバー・オーケストラ
・コンピュータ・ミュージック~interactive computer music (※)
・ヴォーカル・アンサンブル~ヴォクスマーナ精緻なる響き

◆新しい音楽のカタチ~軌跡と未来 2days コンサート 第2日》
2012.1/22 浜離宮朝日ホール音楽ホール/小ホール(※)
・ピアノ・デュオ~藤井隆史&白水芳枝/瀬尾久仁&加藤真一郎
・辺見康孝×ケージ《フリーマン・エチュード》全曲リサイタル(※)
・室内楽II ―strings― with JSCMユース・チェンバー・オーケストラ

◆宮本妥子パーカッションリサイタル~閾を越えて
2012.2./17 京都芸術センター・フリースペース

佐藤昌弘事務局長回顧録―2007→2011 第4回「2010年度:創立80周年記念事業Vol.1」

第4回「2010年度:創立80周年記念事業Vol.1」

2010年に現音は創立80周年を迎えました。我が国において80年も続いている芸術音楽の作曲家の団体は現音しかありません。戦前からの歴史を持っているわけですから、これはスゴイことです。この記念の年に、国際的な現代音楽祭を、どこかメジャーなホールを借り切って大々的に数日間にわたって催し、オープニングコンサートはフルオーケストラで華やかに幕開け!…なんてやってみたかったですね。しかし現実には、そのようなことはとても実現不可能な状況にありました。

しかし現音は60周年、70周年のときには、そのような数日間に亘る規模の大きい音楽祭を見事にやってのけたのです。60周年のときにはサントリーホール等で〈東京現代音楽祭〉を、70周年のときには横浜みなとみらいホールにて、悲願であった〈ISCM世界音楽の日々〉の日本初開催を果たしたのでした。80周年のときには、派手な花火を打ち上げられるような社会状況にはなく、事務局長を務めてきた5年間で一番歯がゆい思いをしました。

2010年度の現音の三役(会長、副会長、事務局長)は、まず4月はじめに理事の互選で、前年度に引き続き、会長に坪能克裕氏が、事務局長に私が選出されました。坪能氏の会長職は3年目、私の事務局長職は4年目を迎えました。つづいて副会長には、坪能会長の指名で、前年に引き続き松尾祐孝氏が就任し、80周年記念事業の実行委員長もあわせて引受けて頂きました。厳しい時代だからこそ前向きに、大きなことは出来なくとも少しでも新しいことにチャレンジして、ということがわれわれ三役の共通の認識であったと思います。

協創2010

〈協創 新しい音楽のカタチ〉のチラシ4枚

協会創立80周年記念事業は、2010年度と2011年度の二ヵ年にわたって開催されることが、理事会と総会でそれぞれ承認され、2010年度にその第一弾の記念事業を実施することになり、年間に8本の演奏会を、10月から翌年2月にかけて4ヵ月間に集中開催しました。タイトルは、〈協創 新しい音楽のカタチ―現音・特別音楽2010〉。ネーミングにあたっては、さまざまな紆余曲折があって決して一筋縄で決まらなかったですね。最終的には、何人かの会員からの幾つかのアイデアを混合して、このタイトルが出来上がりました。それだけ企画立案は民主的に行われ、慎重な検討が重ねられていたわけです。

2010年度の一連の演奏会では、朝日現代音楽賞受賞記念演奏会である「篠崎史子ハープリサイタル」と「現音作曲新人賞本選会」をリンクさせて、創立80周年記念シリーズのオープニングコンサートとしたり、現音レジデンスのユース・チェンバー・オーケストラを旗揚げしたり、首都圏公演企画として関西公演シリーズを立ち上げるなど、そこには理事会、創立80周年記念事業実行委員会等からで出た、何人もの会員のいろいろなアイデア、意見が反映されています。唯一“競楽IX”だけは、審査委員長をお引き受け下さった野平一郎会員に完全に主導権をとって頂き、野平氏に、審査委員の選定には現在考えられる最高の布陣をお考え頂き、それらの方々に直接打診までして下さりました。

最後に個人的なことで恐縮です。私が現音に入会したのは、藝大の大学院を修了してから6年経った1996年のこと。入会から4年ばかりは、作品を出品したり、会の運営に参加したりすることはまったくなかったのですが、2000年、2001年の総会に出席したことがきっかけで執行部連に顔も覚えて頂き〈ISCM世界音楽の日々2001横浜大会〉に、インスペクターという形で運営のお手伝いをさせて頂きました。その後まもなく、大会で携わった仕事についての報告をするようにとの、当時の事務局長で横浜大会の実行委員長であった松尾祐孝現副会長の指示で、初めて現音委員会(現在の現音理事会)にお邪魔しました。

それからは松尾氏の推薦によりオブザーバーという形で、いつのまにか末席で毎回委員会に参加するようになり、やがて、当時の委員長(現在の会長)であった松平頼暁名誉会員のご指名で、「現音・秋の音楽展2002」の制作担当らしきものをやらせて頂き、加えて同音楽展で現音初出品をしました。ハープとピアノのデュオの新作で、ゲネプロが終わるや否や「イイ響きしていたよ」と私を励まして下さったのが、坪能克裕現会長でした。私のこの現音初出品曲は、8年後に、前記の創立80周年記念シリーズのオープニングコンサートで、篠崎史子さんのハープと木村かをりさんのピアノで再演されたのでした。

篠崎史子

ピアノ:木村かをり ハープ篠崎史子

(つづく)

★次回第5回「2011年度:80周年記念事業Vol.2」

更新は3月30日(金)です。お楽しみに!

《2010年度の現音演奏会・全8公演》

◆協創 新しい音楽のカタチ―現音・特別音楽2010
・『創立80周年記念シリーズ オープニングコンサート~現代ハープ音楽の領域』
2010.10/4 東京文化会館小ホール
第1部:第27回現音作曲新人賞本選会
【審査員】糀場富美子(長)北爪道夫 松平頼暁
【オブザーバー】篠崎史子 ロッセッラ・スピノーザ
【新人賞】山本哲也
【冨樫賞】該当者なし
第2部:篠崎史子ハープリサイタル 第17回朝日現代音楽賞受賞記念演奏会
【共演】木村かをり 篠崎和子 山口恭範

・『アンデパンダン展第1夜』
2010.11/5 東京オペラシティリサイタルホール

・『アンデパンダン展第2夜』
2010.11/10 東京オペラシティリサイタルホール

・『第9回現代音楽演奏コンクール“競楽IX”本選会』
2010.12/12 けやきホール
【審査員】野平一郎(長) 木ノ脇道元 篠崎史子 菅原 淳 田中信昭 堤 剛、
坪能克裕 原田敬子、吉村七重
【第1位・第20回朝日現代音楽賞】山田 岳(ギター)

・『室内オーケストラの新地平』
2010.11/30 めぐろパーシモンホール大ホール

・『上田 希リサイタル 毒っとクラリネット』
2010.12/20 ムラマツリサイタルホール新大阪

・『フュージョン・フェスタII』
2011.1/21 洗足学園前田ホール

・『世界に開く窓~ISCM“世界音楽の日々”を中心に~西欧特集』
2011.2/26 日本大学芸術学部音楽小ホール

佐藤昌弘事務局長回顧録—2007→2011 第3回「2009年度:初の演奏家芸術監督・堤剛氏」

第3回「2009年度:初の演奏家芸術監督・堤剛氏」

現代の音楽展2010

現代の音楽展2010

今回の回顧録は2009年度です。この年度で印象的であった世の中の出来事といえば、私は「事業仕分け」をあげます。当時、仕分けを担当した某議員が、「二番ではダメなのですか?」と言って物議を醸しましたけれど、この議員の発言に象徴されるように、芸術団体にとっても、ますます経済的に厳しい状況となったことを実感させられた年でした。

この年度、現音では4月に、前年度に引き続いて会長に坪能克裕氏が、事務局長に私が選出されました。2009年度は芸術監督制の最終年となり、芸術監督には作曲家ではなく、演奏家を初めて招聘、国際的チェリストで、桐朋学園大学学長、サントリーホール館長の堤剛氏にお引き受け頂きました。堤氏の提唱された「人間性と共に歩む現代音楽」をテーマに、〈現音・秋の音楽展2009〉が5公演、〈現代の音楽展2010〉も同じく5公演の計10公演が2009年度の演奏会として、すでに前年度のうちに企画を確定し、各方面への助成申請も済ませていました。

ところが新年度が始まる目前の2009年3月終わりのこと、申請していた助成が不採択になってしまいました。これは本当に痛かったです。予定していた年間10本の公演数を9本にしたのも、こういった財務上の理由によっています。やがて奔走の結果、協賛のスポンサーがつくことになって一息ついたのですが、この厳しい時代を迎えて、資金面についての今後の行く先は、予断の許さぬ状況にありました。

しかし、そのような状況にありながらも、2009年度の一連の演奏会は大変充実したものでした。それはやはり、堤剛芸術監督のご活躍、ご貢献が大であったためといえましょう。本当にこの年度は、堤氏にお世話になりました。「器楽アトリエV」ではワークショップをご指導を、「第26回現音作曲新人賞」では審査員長を、「チェロアンサンブル展」では企画、選曲をして頂いた上に、本番でもトークでご出演、そして「コンチェルトの夕べ」では、ご本業のチェリストとしてご出演頂き、堤氏が50年前にソリストとして初演した、矢代秋雄作曲の《チェロ協奏曲》を、奇しくも半世紀前の初演時と同じ会場の杉並公会堂で、堤氏が学長を務められている桐朋学園のオーケストラと協演して下さり、2009年度現音公演の最後を飾って頂いたのでした。

「コンチェルトの夕べ」チェロ独奏の堤剛氏と指揮の山下一史氏

「コンチェルトの夕べ」堤剛氏と指揮の山下一史氏

芸術監督制は2004年度に始まりました。導入にあたっては、当初反対意見もありましたが、最終的には総会の承認を得て実現したのでした。2004年度の芸術監督は湯浅譲二名誉会員で、テーマは「いま、創造性へ」、2005年は故・林光名誉会員、テーマは「声の復権」、2006年度は三善晃名誉会員、テーマは「未来を紡ぐ」、2007年度は三枝成彰理事、テーマは「芸術音楽に大衆性は必要か!?」、2008年度は一柳慧氏、テーマは「コンセプトの明確化―音楽に実体を」でした。

このように各年、その年の芸術監督らしいテーマが掲げられ、年間の事業の一つの指針になりました。テーマがあることで、事業の性質を限定してしまったり、上演作品の性格の幅を狭くしてしまうのではないかという懸念もありましたが、そのような強制力、干渉力は無く、むしろ、テーマに触発された発展的な創作が行われ、多くの力作が生まれました。演奏家・堤剛氏が現音に示した年間テーマ「人間性と共に歩む現代音楽」は、この年度のみならず、われわれ現代の作曲家に対する貴重な一つの問題定義となって、今後のわれわれの創作活動に関わっていく可能性のあるものとして捉えることが出来ると思います。それくらい重みのあるメッセージと、私は一年間ご一緒させて頂いて実感しました。堤氏は次のように語っています。「私は人間という存在をもっと大きな視点で見直し、その本質そのものをも考え直すことによって、新しい形をもった「音楽」が生まれてくるのではないかと期待しているのです」(第26回現音作曲新人賞本選会・挨拶文より)

(つづく)

★次回第4回「2010年度:80周年記念事業Vol.1」

更新は3月23日(金)です。お楽しみに!

《2009年度の現音公演・全9企画》
◆現音・秋の音楽展2009
・『器楽アトリエV』
2009.10/24 sonorium

・『電楽IV~ライヴエレクトロニクスの現在』
2009.11/6 アサヒ・アートスクエア

・『アンデパンダン展第1夜』
2009.11/11 東京オペラシティリサイタルホール

・『アンデパンダン展第2夜』
2009.11/12 東京オペラシティリサイタルホール

・『第26回現音作曲新人賞本選会』
2009.11/16 東京オペラシティリサイタルホール
【審査員長】堤 剛
【審査員】安良岡章夫 福士則夫(譜面審査のみ)坪能克裕(演奏審査のみ)
【新人賞】村瀬晴美

◆現代の音楽展2010

・『チェロアンサンブル展』
2010.2/14 府中の森芸術劇場ウィーンホール

・『世界に開く窓~ISCM“世界音楽の日々”を中心に~北米特集』
2010.3/3 東京オペラシティリサイタルホール

・『箏フェスタ』
2010.3/6 洗足学園前田ホール

・『コンチェルトの夕べ』
2009.3/18 杉並公会堂大ホール

第21回朝日現代音楽賞に東京の合唱指揮者・西川竜太さん

西川竜太

西川竜太

その年の現代音楽演奏に優れた業績を示し、現代音楽の発展に功績のあった演奏者を顕彰する、第21回朝日現代音楽賞(日本現代音楽協会、朝日新聞社主催、賞金50万円)の選考がこのほど行われ、数多くの新作合唱曲の委嘱や初演を手がけている東京都北区の合唱指揮者、西川竜太さん(39)に決まりました。

表彰式は2012年5月19日(土)日本現代音楽協会総会に於いて行います。

また、日本現代音楽協会は、長年日本の現代音楽を海外に紹介している福島市の三浦尚之さん(70)に「日本現代音楽協会特別賞」を贈ることを決定しました。

 

2011年西川竜太指揮による演奏

▼ヴォクスマーナ出演 / 洗足学園音楽大学 音楽史レクチャーコンサート
1月18日 洗足学園音楽大学2400講堂
湯浅譲二(b.1929)/ プロジェクション ― 人間の声のための(2009委嘱作品)
伊藤弘之(b.1963)/ 声楽アンサンブルのための「揺らぐ風を織る」(2010委嘱作品)
森田泰之進(b.1969)/ 混声合唱のための「あねさんろっく Anesan Rock」(2010委嘱作品)

▼成蹊大学混声合唱団 出演 / 桐朋学園大学音楽学部・作曲専攻教育支援プログラム
湯浅譲二《音楽の開かれた地平へ》レクチャーコンサート
2月22日 桐朋学園大学音楽学部402教室
湯浅譲二(b.1929)/ 混声合唱曲「息」(2004) 詩:谷川俊太郎
混声合唱曲「歌 A Song」(2009委嘱作品) 詩:谷川俊太郎

▼ヴォクスマーナ第24回定期演奏会
3月6日 東京文化会館小ホール
川島素晴(b.1972)/ 12人のおかしな日本人(2011委嘱新作・初演)
木下正道(b.1969)/ 書物との絆Ⅱ(2011委嘱新作・初演) 詩:エドモン・ジャベス
鈴木治行(b.1962)/ ちりぬるを(2007委嘱作品・再演)
伊左治直(b.1968)/ Nippon Saudade(2008委嘱作品・再演)

▼混声合唱団 空(くう)第3回演奏会
5月15日 JTアートホール アフィニス
篠原 眞 (b.1931)/ 24人のヴォカリストのための「Syllables」(2005・初演)
湯浅譲二(b.1929)/ 擬声語によるプロジェクション(1979)
柴田南雄(1916~96)/ 歌垣 no.77(1983)
「三つの無伴奏混声合唱曲」より 1.水上

▼ヴォクスマーナ第25回定期演奏会
9月12日 東京文化会館小ホール
近藤 譲 (b.1947)/ 薔薇の下のモテット(2011委嘱新作・初演) テキスト:蒲原有明
山本和智(b.1975)/ Holy Mountain(2011委嘱新作・初演)
伊左治直(b.1968)/ グランド電柱(2011委嘱新作・初演) 詩:宮澤賢治
湯浅譲二(b.1929)/ 声のための「音楽(おとがく)」(1991)
Iannis Xenakis(1922~2001)/ Nuits(1968)

▼都立芸術高校音楽科 第40回定期演奏会
10月28日 都立芸術高校音楽ホール
西村 朗 (b.1953)/ 同声合唱とピアノのための組曲「永訣の朝」(2006) 詩:宮沢賢治
湯浅譲二(b.1929)/ 女声合唱組曲「ふるさと詠唱」(1982・99) 詩:三谷晃一

▼湯浅譲二 合唱作品による個展 第1回
―― 発音・発声・言語の始源と音楽の新しい関係を拓く~ 湯浅譲二 40年に渡る軌跡 ――
11月13日 トッパンホール
アタランス(1971)/成蹊大学混声合唱団
擬声語によるプロジェクション(1979)/混声合唱団 空
声のための「音楽(おとがく)」(1991)/ヴォクスマーナ
女声合唱組曲「ふるさと詠唱」(1982・99) 詩:三谷晃一/女声合唱団 暁
声のためのプロジェクション――音響発生装置としての(1999)/混声合唱団 空
男声合唱のための「芭蕉の俳句による四季」(2002)/男声合唱団クール・ゼフィール
混声合唱曲「息」(2004) 詩:谷川俊太郎/成蹊大学混声合唱団
混声合唱曲「歌 A Song」(2009) 詩:谷川俊太郎/成蹊大学混声合唱団
「懐かしいアメリカの歌」 より 4.Carry me back to Old Virginny/出演者全員

▼成蹊大学混声合唱団 第47回定期演奏会
12月23日 国立オリンピック記念青少年総合センター大ホール
松平頼暁(b.1931)/ プレリュード(2011委嘱新作・初演) テキスト:猿田長春
湯浅譲二(b.1929)/ アタランス(1971)
混声合唱曲「息」(2004) 詩:谷川俊太郎
混声合唱曲「歌 A Song」(2009委嘱作品) 詩:谷川俊太郎
「懐かしいアメリカの歌」 より 4.Carry me back to Old Virginny

▼女声合唱団 暁 第4回演奏会
12月24日 JTアートホール アフィニス
湯浅譲二(b.1929)/ 女声合唱曲「カヒガラ」(2011委嘱新作・初演) 詩:瀧口修造
女声合唱組曲「ふるさと詠唱」(1982・99) 詩:三谷晃一
木下正道(b.1969)/「書物との絆Ⅰ」女声合唱とピアノのための(2010委嘱新作・初演)
詩:エドモン・ジャベス
松平頼暁(b.1931)/ 児童合唱のための「さくら」(1999)
児童合唱のための「5つのフォルクロールス」(1990-91)

佐藤昌弘事務局長回顧録—2007→2011 第2回「2008年度:一柳慧芸術監督とコンテンポラリー・ヴィルトゥオーゾ!」

第2回「2008年度:一柳慧芸術監督とコンテンポラリー・ヴィルトゥオーゾ!」

福士則夫

会長職を満了した福士則夫理事が花束を受け取る。

2008年度に入り、4月1日に新年度の第1回の理事会が開かれ、会長、事務局長選挙の開票が行われました。その結果、5年の任期継続上限を満了した福士則夫氏にかわって、坪能克裕氏が新会長に選出されました。事務局長には私が再選され、2年目の職務を任せられることになりました。会議が終了して、福士前会長に花束が手渡され、感謝の拍手が送られた後、会議出席者一同は事務局を出て送迎バスに乗り込み、品川の船着き場へ。福士前会長の念願であった、屋形舟での新年度会を開き(もちろん会費制です)、福士前会長の労をねぎらい、坪能新会長の就任を祝って乾杯をしたのでした。

坪能氏は1990年、協会創立70周年事業の〈東京現代音楽祭〉を成功に導いた実力者です。今では、日本を代表する現代音楽演奏コンクールとしてすっかり定着した「競楽」は、この〈東京現代音楽祭〉での開催が第1回でした。坪能会長&佐藤事務局長のペアは結局、2008年以降4年間続くことになるのですが、坪能会長は実に気の利くお方で、気の利かないこと夥しい私はこれまで、どれだけ坪能会長にフォローして頂いて来たかわかりません。

福士氏は、現音の近代化に大きく貢献された方です。委員、委員長といった前時代的な呼称を理事、会長に改め、会長指名理事枠や、20代の作曲家のために準会員枠を設けたことなどはすべて、福士氏を長とする「将来計画プロジェクトチーム」からの提案から実現したものです。私は、福士氏が会長に就任された2003年から理事を務めておりますが、初めは選挙によっての選出でなく、会長指名によってでした。2004年度から2009年度まで6年間施行された芸術監督制も、「将来計画プロジェクトチーム」の発案によるものです。芸術監督制導入の意図について、福士前会長は会報で次のように書かれています。

〈現代の音楽展2009〉チラシ

〈現代の音楽展2009〉チラシ

「従来の演奏会が並列的羅列によって現音のメッセージとしては希薄ではなかったか、 その反省から個性的なメッセージを年間の演奏会に強く反映させる意図のもとに、2004年度においては湯浅譲二氏に芸術監督をお願いしました」。湯浅名誉会員に始まった芸術監督は、林光名誉会員、三善晃名誉会員、三枝成彰理事と続き、5年目にあたる2008年度で初めて会員外の作曲家となる一柳慧氏を招聘しました。一柳芸術監督の提唱した年間テーマは「コンセプトの明確化—音楽に実体を」という、いかにも一柳氏らしいものでした。一柳芸術監督には、この年の現音作曲新人賞の審査員長、競楽の審査員も引き受けて頂きましたが、さらには、企画して頂いた上にピアニストとして出演までして下さった演奏会があり、それが「コンテンポラリー・ヴィルトゥオ—ゾ!」でした。

演奏会のプログラムは当初、ヴィルトゥオーゾをテーマに公募した、会員、一般からの作品に、ジェフスキーのピアノ・デュオ曲“Winnsboro cotton mill blues”、それに一柳氏のピアノ独奏曲《ピアノ・メディア》と《タイム・シークエンス》を加えるという案で、ジェフスキー作品については一柳氏も演奏に加わって下さることになりました。しかし集まった公募作品が充分な曲数に至らなかったため、当公演の制作担当者であった私と糀場富美子理事が、一作ずつ旧作を持ち寄ることになりました。

さて一柳作品の演奏者ですが、《タイム・シークエンス》の方は作曲者のイチオシで、若手ピアニストの寒川晶子さんに決まりました。《ピアノ・メディア》の演奏は最初、木村かをりさんに依頼したのですが辞退され、結局、長尾洋史さんが弾いて下さることになりました。しかし木村さんには是非とも出演して頂きたかったので、一柳芸術監督とのデュオでの出演をあらためてお願いし、ご快諾頂けました。ところがまもなく、ジェフスキー作品を上演するにあたり、ある問題が生じて演目から外さなくてはならない事態となり、演奏をお願いしていた木村さんと一柳芸術監督に、かわりの作品の選曲をお願いしました。

やがて私のところへ一柳氏から電話がかかってきました。「この前、木村さんと食事し ながら検討したんですよ。それで結論をいいますとね、佐藤さん、あなたに新作を書いて頂こうという話になりましてね」と、こんな感じで一柳氏は話されまして、当時、私は他に2曲委嘱を抱えていたのですが、せっかくのご提案に、これはとても断れないと思い、お引受けしたのでした。演奏会では最後の演目として、木村さんと一柳芸術監督に初演して頂いて、とても貴重な思い出となりました。

佐藤昌弘《パサージュ II 》

佐藤昌弘《パサージュ II 》

ところで2008年というと、9月にリーマンショックがありましたよね。この前後から時代は、世界的に厳しい経済状況の趨勢となりましたが、坪能会長は2008年度第2号の会報で、現音もまた例外ではないと述べました。しかし、このような状況だからこそ、会員への協力を強く呼びかけたり、現音をサポートして下さる「維持会友」の入会をお願いするためのパンプレットを作って各方面にアピールしたりもしました。そして2008年度末のこと、翌年の事業を進める上で大きな打撃となる知らせが飛び込んできたのでした。

(つづく)

★次回第3回「2009年度:初の演奏家芸術監督・堤剛氏」

更新は3月16日(金)です。お楽しみに!
【2008年度の現音公演・全10企画】

◆現音・秋の音楽展2008

・『第25回現音作曲新人賞本選会』
2008.10/17 東京オペラシティリサイタルホール
【審査員】一柳慧(長) 金子仁美 野平一郎 【新人賞】横井佑未子 【冨樫賞】秋元美由紀

・『電楽III』
2008.10/19 世田谷美術館

・『アンデパンダン展第1夜』
2008.11/3 東京オペラシティリサイタルホール

・『アンデパンダン展第2夜』
2008.11/6 東京オペラシティリサイタルホール

・『第8回現代音楽演奏コンクール“競楽VIII”本選会』
2008.11/30 けやきホール
【審査員】松平頼暁(長) 一柳慧 甲斐史子 中川俊郎 野口千代光 野口 竜  藤本隆史 吉村七重
【第1位・第18回朝日現代音楽賞】増本竜士

 

◆現代の音楽展2009

・『唱楽III〜児童合唱の領域』
2009.2/1 東京文化会館小ホール

・『サクソフォーン・フェスタ』
2009.3/1 洗足学園前田ホール

・『世界に開く窓〜ISCM“世界音楽の日々”を中心に〜北欧特集』
2009.3/5 東京オペラシティリサイタルホール

・『コンテンポラリー・ヴィルトゥオ—ゾ!』
2009.3/6 東京オペラシティリサイタルホール

・『MoVEヴォーカルアンサンブル演奏会』
2009.3/8 東京オペラシティリサイタルホール