競楽XII本選出場者紹介〜鈴木あや(フルート)

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▼本選演奏曲
福島 和夫/冥 (1962)
Ian CLARKE/The Great Train Race (c foot version) (2010)
多久 潤一朗/虹(2009)

 

私が現代曲が好きになったのは、3つの作品に出会ったことがきっかけです。

武満徹の《ヴォイス》。
I.クラーク 氏の作品。
多久潤一朗 氏の《虹》。

音楽を超えた総合芸術的な曲。特殊奏法を、彩色的で描写的に、ごく自然に使用し、美しく面白い曲。現代曲の多様性とフルートの大きな可能性をこの楽曲によって知り、気持ちが高揚したのを覚えています。今回、憧れであった本コンクールにエントリーするに際し、私に大きな影響を与えた作品を選曲しました。

福島和夫の《冥》は、学生時代に師から勧められた当時、私にはこれを表現するイメージが出来ませんでした。

作者の言葉『弔笛 。笛の音は比世と彼世、ふたつの世ながらに響くという。《冥》くらい。ふかい。遠い。とおざかる。黙して思う。宇宙的無意識。』

特に難しい特殊奏法等は無いのですが、この曲には宇宙的広がりがあります。彼世にいる大切な人達に呼び掛けられたら。この曲に出会って数年が経った、今現在の自分の弔笛が表現できたらと思っております。

◎プロフィール

日本大学芸術学部卒業、同大学芸術学研究科博士前期課程音楽芸術専攻卒業。2013年ヤマハ新人演奏会、大学院修了演奏会、第7回ドルチェ楽器デビューコンサートに出演。フルートの特殊奏法の歴史と奏者から見た記譜法についての修士副論文が「THE FLUTE vol.143」(アルソ出版)で紹介される。これまでにフルートを高木綾子、故・立花千春、白戸美帆、室内楽を庄司知史、ソルフェージュを峰村信一、作曲を峰村澄子の各氏に師事。

 

▼予選演奏曲
武満徹/Voice(1971)

競楽XII本選出場者紹介〜古川玄一郎(打楽器)

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▼本選演奏曲
Karlheinz STOCKHAUSEN/ZYKLUS für einen Schlagzeuger Nr. 9(1959)
Matthieu BENIGNO, Alexandre ESPERET, Antoine NOYER/
Ceci N’Est Pas Une Balle(2012)

 

カールハインツ・シュトックハウゼン(1928-2007)はドイツの作曲家。
《ツィクルス》は1959年ダルムシュタット国際現代音楽祭で初演される。
音たちは作曲者により注意深く管理されているが、演奏者、聴者から想像することを決して奪わない。

「これはボールではない」は2012年にアレクサンドル・エスペレ等3人の若いフランス人打楽器奏者の視座によりかかれた。
表現媒体としての打楽器の在り方を問うた作品。
演奏とは?音楽とは?芸術とは?

最も根源的な楽器である打楽器は、我々のプリミティヴな感情の表出に相応しい。

◎プロフィール
洗足学園音楽大学を首席にて卒業。同大学大学院修士課程修了。20世紀以降の音楽を得意分野とし、日本現代音楽協会主催の「現代の音楽展」等で国内外の作品の初演に参加する他、コンテンポラリーダンス、映像、写真、絵画、朗読等とのインスタレーションアートにも積極的に取り組む。劇団四季「異国の丘」、ミュージカル「テイクフライト」(宮本亜門)、舞台「から騒ぎ」(蜷川幸雄)他の打楽器を担当。洗足学園音楽大学講師。

 

▼予選演奏曲
池辺晋一郎/モノヴァランス IV マリンバ等のために(1975)

競楽XII本選出場者紹介〜井上ハルカ(サクソフォン)

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▼本選演奏曲
Stefano GERVASONI/Phanes II(2009-10/2013)
棚田 文紀/Mysterious Morning III(1996)

 

パリ留学中からずっと出場したいと思っていた競楽への出場が叶い、この度本選で演奏できることをとても嬉しく思っています。

鼓膜を様々に刺激する音が生み出す感じたことの無い感覚、魔法のような時間に魅了されてから、現代音楽作品に意欲的に取り組むようになりました。
今回本選で取り上げるのは、どちらもパリ国立高等音楽院にて大変お世話になった二人の先生の作品です。ステファノ・ジェルヴァゾーニ先生の《Phanes II》は、蝶の羽ばたきのような繊細さの中に、綿密なポリフォニーが書かれた作品です。棚田文紀先生の《Mysterious Morning III》は私が8年前に始めて本格的に取り組んだ現代音楽作品であり、サクソフォンの国際コンクールでも頻繁に取り上げられています。当時は演奏するのに必死だった記憶がありますが、今回は当時とは全く違ったアプローチの仕方を楽しみながら取り組むことができました。これらの作品の持つ魅力を感じていただければ幸いです。

◎プロフィール

ESA音楽学院、リヨン地方音楽院を経てパリ国立高等音楽院サクソフォン科、第三高等課程DAI現代音楽クラスを修了。ブーローニュ・ビヤンクール現代音楽コンクール2014にて審査員特別賞(部門最高位)を受賞。2012年度から2014年度までヤマハ留学奨学生。Mayer財団、ADAMI財団奨学生。サクソフォンを前田昌宏、ジャン=ドニ・ミシャ、クロード・ドゥラングルの各氏に、室内楽と現代音楽をイェンス・マクマナマ、へ=スン・カンの各氏に師事。ESA音楽学院講師。

 

▼予選演奏曲
坂田直樹/Tilt-Shift(2015)

競楽XII本選出場者紹介〜井上仁美(マリンバ)

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▼本選演奏曲
三木 稔 /マリンバの時(1968)
Ivan TREVINO/Electric Thoughts(2014)

 

コンサート楽器としての歴史が浅い打楽器にとって「現代音楽」は馴染みの深いジャンルです。そんな「現代音楽」に真正面から向き合い、楽譜を正確に、尚且つ自分なりに読み込むことの大切さを教えてくれる「競楽」で、本選に出場できますこと、心より嬉しく思います。

《マリンバの時》(三木稔)は世界的に有名なマリンバのための作品です。日本を代表するマリンバ奏者安倍圭子氏のために書かれ、ガムランの音列やリズムに影響を受けています。三木氏はマリンバの音を持続させるための「トレモロ奏法」が過剰であることを嫌い、この作品でも最低限しか使われていません。

《Electric Thoughts》(Ivan Trevino)はマリンバとCDのために書かれた作品です。電子音は伴奏としてバランスを保ちマリンバの響きを強化しており、シンプルながら美しい作品です。

マリンバという楽器の魅力を多面的に皆様にお伝えできたらと思っています。

◎プロフィール

3歳よりピアノ、13歳より打楽器を始める。東京芸術大学卒業、同大学院を修了。修了時に大学院アカンサス音楽賞を受賞。これまでに、マリンバ・打楽器を藤本隆文、故岡田眞理子、神谷百子、石井喜久子の各氏に師事。2012年、第7回安倍圭子国際マリンバアカデミーを受講、選抜者によるプレミアムコンサートに出演。2014年、万里の長城杯入賞。多数の新曲初演を始め幅広い分野で演奏活動を行う他、アウトリーチ活動や吹奏楽部の指導なども精力的に行う。また、音楽療法を学び演奏活動に生かす研究を重ねている。

 

▼予選演奏曲
三善晃/リップル 独奏マリンバのための(1999)

競楽XII本選出場者紹介〜小倉美春(ピアノ)

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▼本選演奏曲
石島 正博/REQUIEM for piano solo(2011)
Karlheinz STOCKHAUSEN/Klavierstück XIV(1984)

 

この度は、競楽の本選にて、敬愛する2人の作曲家の作品を演奏させていただくこととなり、嬉しく思います。

1曲目は、私の作曲の師でもある石島正博先生の《REQUIEM for piano solo》です。東日本大震災直後に作曲され、カトリックのミサに倣い6つの部分から成っています。静厳な世界の中、いつか必ず与えられるであろう光を求めて、祈り続けます。

2曲目は、STOCKHAUSEN《Klavierstück XIV》です。ブーレーズの60歳の誕生日に際し作曲され、合唱付きの版としてオペラ《Licht》の中にも組み込まれています。全てを包み込んでしまうような壮大さに圧倒されながら、強烈な光のもとへと向かっていきます。

私にとって現代音楽は、過去と未来を繋ぎとめ、「いま、この瞬間に」存在していることを認識するためのものとなっています。本選のステージが、全ての方々にとって祈りの場になれば幸いです。

◎プロフィール

3歳より、ピアノ・ソルフェージュを始める。桐朋女子高等学校音楽科在学中、卒業演奏会等に出演。Stockhausen Festival(ミュンヘン)のピアノアカデミーに受講生として選抜され、ピエール=ロラン・エマール及びタマラ・ステファノヴィチ各氏のレッスンを受ける。桐朋学園大学主催第38回作曲作品展選出。現在桐朋学園大学音楽学部2年に在学中。ピアノを廻由美子、作曲を石島正博の各氏に師事。

 

▼予選演奏曲
Karlheinz STOCKHAUSEN/Klavierstuck(1952-1953)