競楽XIII本選出場者紹介〜池永健二(打楽器)

▼本選演奏曲
Kevin VOLANS/She Who Sleeps with a Small Blanket(1985)

本日はケヴィン・ヴォランズ(1949-)作曲の《She Who Sleeps With A Small Blanket》を演奏いたします。ヴォランズは南アフリカ生まれで、作曲をドイツのK.シュトックハウゼンに師事しています。70年代中頃には[Neue Einfachheit (新しい単純性)]と呼ばれる音楽運動にも関係し、後のポスト・ミニマリズムの作曲家に影響を与えます。
1979年以降、アフリカへの記録旅行から得たアフリカの曲構成を用いた作曲技法をヨーロッパにもたらしました。
1985年に書かれた《She Who Sleeps With A Small Blanket》。私はこの作品と向き合う中で、この作品を表現するために修辞学に興味を持ち、人が話すこと、喋ることを改めて感じ直す日々を送っております。
私にとって太鼓を叩くことは、喋ること。そして、伝えること。何を伝えるか。日々少しずつ変化する自身の心や身体と向き合いながら、その答えをいつまでも、何処までも探求していける人生でありますよう願います。
今日と言う名誉ある、素敵な機会を頂けましたことに心から感謝しております。

◎プロフィール
愛知県立芸術大学を経て、同大大学院修士課程を修了。在学中より数々の演奏会、音楽祭に出演。2007年度アリオン賞奨励賞を受賞。大学院修了後、富士山の麓にて山籠り。ソリストとして自分にしか出来ない世界観を思案、創造しては全国各地で披露し、自分の感性と向き合ってきた。2014年より東京を拠点に演奏活動を本格的に始動。2015年からリサイタルシリーズを企画。これまでに打楽器 マリンバを故 何森博子、今村三明、神谷百子、佐野恭一、深町浩司、池上英樹の各氏に師事。また、打楽器の原点を肌で感じるべくアフリカを旅し、ケニアにてJean Cloud氏に手ほどきを受ける。

▼予選演奏曲
一柳 慧/独奏マリンバのための 源流(1990)

競楽XIII本選出場者紹介〜土橋庸人(ギター)

▼本選演奏曲
高橋 悠治/メタテーゼ第2番 (1968)
Claude VIVIER/Pour guitare(1975)

この度はこのような素晴らしい舞台に立たせていただける事を大変うれしく思っております。
1曲目は高橋悠治作曲《メタテーゼ第2番》(1968)を演奏いたします。メタテーゼとは音位転換の意味で、弛まなく変化する音たちは感情が入り込むすきがないほど純粋な世界を構築しています。なんの匂いもない、といってもいいかもしれませんが、この真っすぐな曲に強く惹かれます。半世紀前の作品ながら1つのギター音楽の到達点です。
2曲目はC.ヴィヴィエ作曲《Pour guitare(ギターの為に)》(1975)です。バリのガムランの模した響きが特徴的で、前曲と全く違った意味をもつ空白を聴いていただけたら幸いです。

◎プロフィール
これまでにギターを松居孝行、佐藤紀雄、D.ゲーリッツの各氏に師事。エリザベト音楽大学卒業。ベルリン国立音楽大学ハンス・アイスラー大学院修了。リリエンフェルト(オーストリア)の音楽祭に招待、日独センター(ドイツ)にて内倉ひとみの個展にて、久保摩耶子のパフォーマンスと共演、ドイツ文化センターにてクリスティーネ・イヴァノヴィッチによるエーリッヒ・フリートの「イザナギとイザナミ」の講演に出演。また「秋吉台の夏2015」にて、山田岳 ギター・ポートレイトコンサートにて「コードウェルの為の祝砲」で共演し好評を博す。第一回パン・パシフィック現代音楽コンクール アンサンブルの部第一位。ウィーン・ギターフォーラム現代音楽賞を受賞。

▼予選演奏曲
Elliott CARTER/CHANGES(1983)

競楽XIII本選出場者紹介〜上路実早生(ピアノ)

▼本選演奏曲
藤倉 大/Etude II “Deepended Arc”(1998)
鈴木 純明/白蛇、境界をわたる(2008)

6年前に初めて競楽に足を運び、今まで聴衆の立場としてこのコンクールを楽しんでおりました。今回初めて出場者として参加し、本選での演奏の機会を頂けたことを、心より嬉しく思っております。
最初に演奏する藤倉大氏の作品は、自然倍音列が幾度となく現れ、響きがドラマティックに拡大していく作品です。
続いて演奏する鈴木純明氏の作品は、蛇の姿を模したツィルクラツィオのフィグールが特徴的で、また随所にベートーヴェンのピアノソナタのフレーズが引用されます。
演奏という行為は、クラシック音楽においてはしばしば「再現芸術」と見做されますが、私は、その作品の本質を見極め、それに向き合うことが最も重要な事だと考えております。単なる楽譜の「再現」にととまらず、作品が持っている魅力を最大限に引き出すことができるよう臨みたいと思います。

◎プロフィール
昭和音学大学、及び同大学院を学長賞を得て修了。これまでに小山田祥子、添田哲平、西川美知子、白石光隆、中川賢一、菊地裕介、松岡淳、江口文子の各氏に師事。第34回ピティナ・ピアノコンペティションG級全国決勝大会入選。第27回大曲新人音楽祭コンクールピアノ部門最優秀賞受賞。近年は、有田正広氏による公開講座でのデモ演奏などを務める。現在、昭和音楽大学伴奏研究員。

▼予選演奏曲
Tristan MURAIL/La mandragore(1993)

競楽XIII本選出場者紹介〜佐古季暢子(マンドリン)

▼本選演奏曲
近藤 譲/早春に(1993)
野田 雅巳/旋回アレグレット(2005)

皆さま、はじめまして。
マンドリンの出場者は2人目になります。この楽器の現代作品のレパートリーは少なく、マンドリンがまだ可能性のある楽器だと知られる機会も多くありません。ですので、マンドリンだけではない、様々な楽器が集う競楽の本選の場で演奏できるチャンスをいただけた事は、とても有難く嬉しいです。
本選の演奏作品は、2曲とも恩師による委嘱作です。
近藤譲作曲の《早春に》は、いわゆるマンドリン定番のトレモロ奏法を一切使わず、単打音のみで奏されます。関連のない音の連続のように聴こえますが、オクターヴを基に構成されており、その中から見出だされた旋律は浮かび上がっては消えていきます。同時に音色の重なりが多彩です。
野田雅巳作曲の《旋回アレグレット》はその名の通り円環運動のモチーフが連続し、円が膨らんだり萎んだり飛んでいったりと、エネルギーを感じる作品です。
マンドリンという楽器のもつ多様な響きと表現をお楽しみいただけましたら幸いです。

◎プロフィール
広島出身。エリザベト音楽大学マンドリン専攻第1期生として卒業。同大学院修了、渡独。中村音楽奨学生に選出される。ケルン音楽舞踊大学ヴッパータル校修士課程マンドリン・ソロ科修了。これまで川口雅行、C.リヒテンベルク、A.ヒンシェ、J.M.delカンポ、S.リスコの各氏に師事。現在、エリザベト音楽大学マンドリン科非常勤講師。

▼予選演奏曲
Kareem ROUSTOM/Ḥanjale for solo mandolin(2013)

競楽XIII本選出場者紹介〜山本昌史(コントラバス)

▼本選演奏曲
松平 頼曉/Replacement for Contrabass(1987)
Giorgi MAKHOSHVILI/REGREPS(2014)

四年前、初めて競楽の本選会を聞いた時の衝撃は今でも忘れられません。この度、その本選会に出場することが叶い、大変光栄に思います。
一曲目の松平頼曉作曲《Replacement》は、最初に提示された7つの奏法が、1234567、1357642、1562473…と、規則的に入れ替わりながら、音価が長くなったり、音程が変化していきます。音単体の持つ面白さが随所に感じられる曲となっています。
二曲目はジョージア(グルジア)生まれの作曲家、コントラバス奏者Giorgi MAKHOSHVILIによる《REGREPS》を演奏します。短いイントロを伴う三部構成となっており、最初と最後の部分は複雑な拍子が絡み合うダンスミュージックのような特徴があります。
全く性格の異なるこの二曲ですが、それぞれの作品を真に捉え、コントラバスという楽器が持つ魅力を充分に伝えるべく、今の自分に出来ることを精一杯発揮したいと思います。

◎プロフィール
静岡県小笠郡大須賀町(現掛川市)出身、大学進学を機に上京。在学中よりエレキベーシストとして活動し、卒業後よりコントラバスを始める。これまでにコントラバスを山本修、吉野弘志の両氏に師事。東京芸術大学別科修了。

▼予選演奏曲
Luciano BERIO/Psy per contrabasso solo(1989)
Teppo HAUTA-AHO/KADENZA(1985)