競楽XIII本選出場者紹介〜鈴木友裕(ピアノ)

▼本選演奏曲
金子 仁美/ある日ピアノと(1992)
Brian FERNEYHOUGH/Lemma-Icon-Epigram(1981)

この度は、本選にて演奏する機会を頂き、大変嬉しく思っております。本選では2作品演奏させて頂きます。
1曲目は私の作曲の師である金子仁美先生の《Un jour avec le piano(ある日ピアノと)》です。12分平均律で調律されている、つまり弦楽器のように自由に微分音を操ることができないというピアノの特性からヒントを得て作曲されました。作曲行為をしてみて初めて感じるピアノという楽器の窮屈さ、また、ピアノと作曲者との関係性が、どこか自分自身と重なるような気がします。
2曲目はBrian FERNEYHOUGH作曲の《Lemma-Icon-Epigram》です。密度の濃い伸縮性のある時間が、野生的な息の上で繰り広げられ、様々な色彩を伴った輝きとなって表れます。
人間にしかできない表現を、客席の皆様に向けたメッセージとしてお届けできればと思っております。

◎プロフィール
1995年、神奈川県生まれ。10歳よりピアノ、18歳より作曲を始める。桐朋学園大学附属子供のための音楽教室を経て、桐朋学園大学作曲専攻卒業。同研究科作曲専攻1年在籍。大学主催のStudents’ Concert、ピアノ専攻卒業演奏会に出演。高橋アキ、Ueli Wiget各氏の公開レッスンを受講。作曲を金子仁美、福士則夫、ピアノを廻由美子、室内楽を石島正博、廻由美子の各氏に師事。

▼予選演奏曲
Luciano BERIO/Sequenaza Ⅳ(1965)

競楽XIII本選出場者紹介〜吉川裕之(クラリネット)

▼本選演奏曲
Paul MÉFANO/Involutive…(1959)
湯浅 譲二/クラリネット ソリテュード(1980)

この度は競楽の本選で演奏する機会をいただき、大変嬉しく思います。無伴奏クラリネットの音楽の魅力をお伝えできたらと思います。
Paul MÉFANO作曲の《Involutive…》は、フラッター奏法の扱いが特徴的な作品です。通常暴力的になりがちなフラッター奏法を弱音から様々な使い方をしていて、よりコントラストの激しい音楽を作り出しています。また作品全体を通して弱音が多用された、繊細な作品になっています。
湯浅譲二作曲の《Clarinet Solitude》は、こちらは重音が特徴的な作品です。きれいなハーモニーが鳴る重音もあれば、刺激的な音がする重音もあり、それらが効果的に使われている、クラリネットの可能性を追求した作品になっています。
どちらも繊細な作品です。この2作品の魅力と共に、繊細かつダイナミックな、クラリネットの魅力もお伝えできたらと思います。

◎プロフィール
高校卒業後に渡仏。フランス国立リュエイユ=マルメゾン音楽院クラリネット科を卒業後、フランス国立オーベルヴィリエ・ラクールヌーヴ音楽院バスクラリネット科、室内楽科を卒業。これまでにクラリネットを松本健司、伊藤寛隆、エマニュエル・ヌヴー、ミシェル・アリニョン、フローラン・エオー、アラン・ダミアン、ヴァレリー・ゲルーの各氏に師事。2002年欧日音楽講座にて奨励賞を受賞。2007年UFAM国際音楽コンクールにて2位受賞。

▼予選演奏曲
Edison DENISSOW/Sonata for Clarinet(1972)

競楽XIII本選出場者紹介〜栗山沙桜里(ピアノ)

▼本選演奏曲
Edison DENISOV/Reflets(1989)
Einojuhani RAUTAVAARA/Piano Sonata No.2 “The Fire Sermon”(1970)

現代音楽に出会ってからいずれは出場をと思っていた競楽で、本選で演奏できる機会をいただけた事をとても嬉しく、また光栄に思っています。
1曲目はロシアの作曲家、Denisovの《Reflet》。様々なモチーフが、暗い水底から空を見上げた時に降り注いでくる光の様に色々な表情を見せ絡まりあいながら進行していきます。この作品の完成は1989年。ソ連崩壊目前の時代です。行き詰まる祖国で彼が降り注ぐ光のその先に見ていたのは果たして希望か絶望か。
2曲目はフィンランドの作曲家、Rautavaaraの作品から《ピアノソナタ第2番 The Fire Sermon(火の説法)》。釈迦による火の説法に触発された同名の詩がT. S. エリオットの“荒地”という長編詩の中にあります。しかし、Rautavaaraはこれとは意識的な繋がりはなく、良いものが崩壊し何か悪しきものが勢力を増していく構図と語っています。時代は1970年。“プラハの春”から2年後、揺れ始めた東欧に東西衝突への不安と不穏な空気が広がり出した世相を写したのでしょうか。
音楽とはその人自身の鏡ですが、同時に時代の鏡でもあります。故に、現代音楽は今を生きる私たちに、より直接的に語りかけてくるのではないかと思うのです。二人の作曲家の想いを皆様にお届けできればと思います。

◎プロフィール
桐朋女子高等学校音楽科、同大学を経てパリ国立高等音楽院に進学し、修士課程を首席で卒業する。その後エコールノルマル音楽院にて1年間現代音楽の研鑽を積む。現代音楽ピアノ国際コンクール(パリ)でグランプリ及びサラベール賞を受賞。その他国内外での受賞歴多数。室内楽フェスティバル(モントリオール)で現代曲プログラムを演奏。その他フランス、日本など各地での演奏会でも積極的に現代曲を取り入れている。ピアノを今川早智子、中村順子、有賀和子、Jacques Rouvier、Hortense Cartier-Bresson、Claire Désert各氏に、現代音楽をFrançoise Thinat氏、室内楽をMichaël Hentz氏に師事。

▼予選演奏曲
佐原洸/Buffer-groove(2017-8)
Pascal DUSAPIN/Étude pour piano N° 4 “Mikado”(1998-9)

日本音楽コンクール作曲部門の審査会に係る変更について弊協会の要望と質問への再回答のお願い

2018年5月5日付で日本現代音楽協会が日本音楽コンクール委員会に対し送付した「日本音楽コンクール作曲部門の審査会に係る変更についての要望と質問」に対し、10月30日付で日本音楽コンクール事務局より下記の文書が届きました。
日本現代音楽協会は、再度日本音楽コンクール委員会に対し、以下の文書を送付いたしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2018年11月26日

日本音楽コンクール委員会 御中

日本現代音楽協会
会長  近藤 譲

日本音楽コンクール作曲部門の審査会に係る変更について
弊協会の要望と質問への再回答のお願い

5月5日付で差し上げた「日本音楽コンクール作曲部門の審査会に係る変更についての要望と質問」へのご回答(10月30日付)を拝受いたしました。
ご回答によれば、弊協会からの要望については、その趣旨を今後の運営の参考にして下さるとのことですので、その点に関しましては御礼を申し上げます。しかし、ご回答には、弊協会からの質問に対してはお答えもご見解も何一つ示されておらず、実質的に回答を拒否する姿勢を明らかになさったと受け取らざるを得ないのは、極めて遺憾です。

此度のご回答では、コンクール規約に述べられているコンクールの趣旨を再記して確認したうえで、「今回の作曲部門の審査・選出方法の変更もこの趣旨に沿うものであり、詳細についてはご指摘の毎日新聞紙面でお伝えしたことが全てです」と述べられております。これによって、当該の毎日新聞の記事に示された審査方法変更の理由が、記事の執筆者である梅津時比古氏個人の解釈に基づいた見解ではなく、日本音楽コンクールの公式な見解であるということが明確になりました。
弊協会は、5月5日付の質問において、作曲部門の審査・選出方法の変更の理由のうち、「経費の削減」以外の二理由―即ち、「本選の演奏において、譜面通りに演奏されないことが起こり得る」、そして、「譜面審査の点数と、演奏を聴いての点数に開きが出る場合がある」―について、それらが非論理的で到底納得できるものでないことを既に指摘致しました。そして今、それらの理由が、貴コンクールが掲げる公式の理由であることが明らかになったわけですので、ここに改めて、日本音楽コンクールの運営責任をお持ちである貴委員会に、弊協会の指摘にも拘わらずそれらの理由に正当性があるとお考えになることの説明を、論理的に納得し得る形でお示し下さるようお願いするものです。
また、「経費の削減」につきましても、作曲部門だけにそれが課せられた理由についてご説明ください。
ご回答には、「もとより、意思決定のプロセスなどについては外部に公表しておりません」
とあり、その点は理解いたしますが、上記に再回答をお願い申し上げていることは、「意思決定のプロセスではなく」、「決定の理由」です。音楽コンクールに限らず、公的な活動を行う機関は、その運営上の重要な決定について、その理由を公にすることが求められるのは当然のことです。ましてや、貴コンクールは、毎日新聞社と日本放送協会という、日本の報道界を代表する機関によって主催されています。公的説明責任を第一義的に尊重し、それを確保することを使命の一つとして掲げている報道機関が、自らの主催する公的事業においてその公的説明責任を果たし得ないとすれば、その報道機関自体の公共性と信頼性が疑われることにも繋がりかねません。
本件につきましては、既に他のメディアでも取り上げられており(例えば、7月26日付、読売新聞東京版朝刊)、多くの人々が関心を寄せています。貴コンクールが、その高尚な理念と目的に相応しい公共的な意識をもって、弊協会からの上記の質問に誠意をもってお答え下さいますよう、改めてお願い申し上げる次第です。

本書簡の宛先と公表について:
此度のご回答には「職掌上、事務局がお答えします」とございましたが、本書簡は、前回の「要望と質問」と同様に、貴事務局にではなく、貴コンクール委員会宛てにお送りいたします。その理由は次の通りです。
貴コンクールの規約の第3条と第4条によれば、コンクールの運営は「日本音楽コンクール委員会」によって為され、事務局はコンクールの実施を担当するとのことです。本書簡に記しました質問は、コンクールの実施上の案件ではなく、運営上の重要な問題に関するものです。したがって、コンクールの運営に責任を持っておられる貴委員会にお出しするのが適切であると判断した次第です。(ご回答にある「職掌上、事務局がお答えします」とは、事務局が貴委員会の代理としてそれを伝える職務を負っているということである、と理解いたしました。)
尚、本書簡は、当協会の公式の公開書簡として、貴コンクールから頂いたご回答と共に、当協会のホームページで公表するとともに、主要音楽雑誌、主要新聞の音楽担当部署等にも送付いたしますので、その旨お知りおきください。

アンサンブル・ルシェルシュ×日本現代音楽協会共同プロジェクト 若手作曲家参加募集

ドイツの現代音楽演奏団体として世界で活躍するアンサンブル・ルシェルシュの定期公演では、毎回開演45分前に、新作1曲だけの小さな演奏会―Zukunft beginnt 19:15(邦訳「未来は19:15に始まる」)が催されています。そこで演奏されるのは、作曲家とルシェルシュのメンバーとのコラボレーションによって作曲された作品です。この企画のための作曲家を、今回初めて日本から募集することになりました。既に作曲された作品を募集するのではなく、作曲家を募集し、選ばれた作曲家とルシェルシュのメンバーが共に、新しい作品を作り上げていくという趣旨です。 作曲家の選考は、共同プロジェクトとして日本現代音楽協会が行います。[日本現代音楽協会国際部 福井とも子]

【募集内容】
2019年9月~2020年7月にアンサンブル・ルシェルシュが行う4公演において一回につき1名、 計4名の作曲家を募集する。コラボレーションを行う楽器とルシェルシュのメンバーは以下の通り。

1) 2019年10月 打楽器 Christian Dierstein クリスチャン・ディアシュタイン
2) 2019年11月 ヴィオラ Paul Beckett ポール・ベッケット
3) 2020年 3月 チェロ Åsa Åkerberg オーサ・オカベルク
4) 2020年 4月 クラリネット 岡 静代

【募集に際しての条件】 
・演奏会3日くらい前にフライブルグに渡航し、リハーサル及び本番に立ち会うこと。 
・渡航費は作曲家負担。ドイツ国内移動費と宿泊費(3泊4日)はルシェルシュが支払う。 
・作曲過程でのやり取りはSkypeで行うため、その環境が整っていること。 
・作曲料は支払われない。

【応募資格】
2018年12月21日現在30歳以下で(1)(2)のいずれかに該当するもの
(1) 日本国籍を有するもの(海外在住も可)
(2) 日本の音楽大学に在籍している外国籍のもの ※在籍証明書を提出すること

【提出物】
以下を郵送または宅配便等で送付する(持込み、e-mailでの提出は不可)。提出物は返却しない。 
・2013年以降に書かれた室内楽作品かオーケストラ作品、あるいはその両方で計2作品の楽譜
・作曲者略歴とe-mailアドレス
・【募集主旨】の1) ~ 4) の楽器について、コラボレーションの第1~4希望までを記載したもの(書式自由)
・参加料の振込日と振込人名がわかるもの(振込票のコピー、または任意に事項を記載したものでも可)
・日本の音楽大学の在籍証明書(日本国籍以外の応募者のみ)

【審査員】近藤 譲、福井とも子、山本裕之、渡辺俊哉

【審査料】5,000円「三井住友銀行/目白支店/(普)/6360842/日本現代音楽協会」に応募時に送金する(日本現代音楽協会会員は無料)。

【締切】2018年12月21日(金)18時必着

 

送付・問合せ:日本現代音楽協会 国際部
〒141-0031 東京都品川区西五反田7-19-6-2F
電話:03-6417-0393 FAX:03-6417-0394
e-mail:80th@jscm.net Web:www.jscm.net