〈現音 Music of Our Time 2021〉「ペガサス・コンサートVol.III」審査結果について

 日本現代音楽協会は2020年度に引き続き、現代音楽の上演に積極的な演奏家を支援すべく、音楽祭〈現音 Music of Our Time 2021〉の中で「ペガサス・コンサート・シリーズ」と銘打った、演奏家自身が企画・出演するリサイタルを2公演、募集致しました(締め切り2021年1月15日)。
 2021年1月23日、北爪道夫、佐藤昌弘、森垣桂一、渡辺俊哉各理事が選考を行いました(オブザーバー:近藤譲理事長)。厳正なる審査の結果、応募全18企画の中から以下の2企画を選出し、音楽祭において開催することとなりました(なお、下記プログラムでの作曲者名と曲名については、応募者による表記をそのまま用いています)。
 審査にあたっては、1)原則的に1945年以降に作曲された作品であること、2)3分の1以上が日本人作品であること、3)世界初演または日本初演を含むこと、という募集条件に加え、優れた演奏技能と演奏表現力を有しており、かつ、企画のコンセプトとプログラミングの創造性、独自性の豊かさ、そして、一夜の演奏会としてのまとまりを十分に備えていることを審査基準としました。
 なお、日本現代音楽協会は「ペガサス・コンサート・シリーズ」を来年度以降も〈現音 Music of Our Time〉音楽祭の中で継続開催する予定です。

 

〈現音 Music of Our Time 2021〉2021年11月25日~12月7日

ペガサス・コンサート・シリーズ Vol. III 全2公演

(1) 篠田昌伸(ピアノ)「篠田昌伸ピアノソロ(?)“Synchronized”」 
2021年12月6日(月)19時開演予定|東京オペラシティ リサイタルホール
【編成】ピアノソロ+サウンドトラック
▼演目
ペーター・アブリンガー/声とピアノ(1998〜)より
「ガードルード・スタイン」「ギョーム・ド・アポリネール」「毛沢東」
ピエール・ジョドロフスキ/白のセリー (2007)、ピンクのセリー(2012)
コンロン・ナンカロウ/自動ピアノのためのスタディ #9, #10, #11(1950〜60)
篠田昌伸/ATONALUMORI II(2020〜21)
夏田昌和/四分音ピアノとピアノのための作品(2021)
池田拓実/サウンドトラックとピアノのための委嘱新作(2021初演)

(2) Phidias Trio「拡張するトリオの音空間」
2021年12月7日(火)19時開演予定|東京オペラシティ リサイタルホール
【編成】クラリネット岩瀬龍太、ヴァイオリン松岡麻衣子、ピアノ川村恵里佳+一部エレクトロニクス
▼演目
ハイナー・ゲッベルス/Bagatellen(1989〜2006日本初演)Vn, Bs-Cl+エレクトロニクス
フィリップ・マヌリ/Michigan Trio(1992)Cl, Vn, Pf
クラウス・ラング/Die Drei Dirndln(2007日本初演)Cl, Vn, Pf
稲森安太己/Scapula(2020)Bs-Cl, Vn, Pf
森田泰之進/Reincarnation Ring IX(2016初演)Cl+エレクトロニクス
田中カレン/Wave Mechanics II(1994)Vn+エレクトロニクス
佐原洸/委嘱新作(2021初演)Cl, Vn, Pf+エレクトロニクス

現音 Music of Our Time 2021 日程(全6公演)
[1]フォーラム・コンサート第1夜|2021年11月25日(木)
[2]第38回現音作曲新人賞本選会|2021年11月26日(金)
[3]フォーラム・コンサート第2夜|2021年12月2日(木)
[4]カーゲル生誕90年×日本現代音楽協会90周年記念公演|2021年12月3日(金)
[5]ペガサス・コンサート(1)篠田昌伸(ピアノ)|2021年12月6日(月)
[6]ペガサス・コンサート(2)Phidias Trio|2021年12月7日(火)
【会場】東京オペラシティリサイタルホール

※上記企画内容は2021年1月現在のものであり、変更となる場合があります。

「ペガサス・コンサート Vol.III」リサイタル企画&主演者募集!

〈現音 Music of Our Time 2021〉
「ペガサス・コンサー トVol.III」募集要項

主催:日本現代音楽協会

「ペガサス・コンサート」は、現代音楽作品の演奏に意欲的な演奏家を支援するシリーズです。演奏家が自ら企画立案して出演するリサイタル企画を広く募集します。応募者の年齢、国籍は問いません。個人、団体のいずれの応募も可能です。また、演奏分野、演奏楽器に制約はありません(電子楽器、エレクトロニクスの使用も可)。なお、応募は無料です。

●開催日時・会場

「ペガサス・コンサート」は、2021年11月から12月にかけて開催される当協会の音楽祭〈現音 Music of Our Time 2021〉の中で、下記の日程で行われます。公演のインターネット配信も行う予定です。

第1回公演:2021年12月6日(月)19:00開演(18:30開場)21:00終演
東京オペラシティ リサイタルホール

第2回公演:2021年12月7日(火)19:00開演(18:30開場)21:00終演
東京オペラシティ リサイタルホール

★上記のどちらの日程でも出演可能なことが応募の条件となります。

●会場費
上記二公演とも、演奏会当日の午後・夜間枠の会場費を協会が負担します。

●制作費補助
上記二公演とも、演奏会制作費補助として、協会より50,000円を提供します。

●チラシとプログラム冊子の制作
〈現音 Music of Our Time 2021〉の共通チラシ、ならびに共通プログラム冊子を協会が用意し、かつ制作費と印刷費を負担します。

●その他の経費
著作権料と会場付帯設備費は出演者が負担して下さい。また楽器借用料(ピアノを含む)、楽器調律料、楽器運搬費も出演者の負担となり、それらに必要な諸手配は出演者が行って下さい。

●プログラムの条件
(1) 原則として、1945年以降に作曲された作品で、2時間内の演奏会(休憩、転換を含む)を企画・構成して下さい。ただし企画の趣旨に沿うものであれば、1945年以前に書かれた作品を若干含む事も可とします。
(2) 初演の作品を1曲以上含めて下さい。(海外で初演された曲の)日本初演も可とします。なお、新作を作曲家に委嘱する場合は、出演者が用意するものとします。
(3) プログラムの曲目の少なくとも3分の1以上を日本人作品とします(できれば2分の1以上が望ましい)。

●チケットの券売と収入について
入場料は座席券が3,000円、インターネット視聴券が1,500円です。出演者へのチケットノルマはありませんが、極力、券売・集客にご協力下さい。なお、リサイタルで得られたチケット収入は、出演者がその3分の1、協会がその3分の2を収めるものとし、別途に出演料は発生しません。

●応募手続き
2020年12月16日(水)〜2021年1月15日(金)18:00必着。郵送または宅配便による送付のみとします。以下の書類(書式自由)と資料をまとめたものをお送り下さい。

1 . a: 応募者氏名、もしくは応募団体名とその代表者氏名 b: 応募者(応募団体代表者)の住所、電話番号、Eメールアドレス
2. 応募者(応募団体)の演奏活動実績を中心としたプロフィール
3. 応募者(応募団体)による近年の演奏の録画データ2曲以上
※1945年以降に作曲された作品の演奏としますが、リサイタルで演奏を予定している作品以外でも構いません。なお、録画データの提出が困難な場合のみ、録音データでも可とします。録画、録音は、パソコンで再生可能なデータをUSBメモリ等のメディアに収めたもの、またはDVD/Blu-ray/CDプレーヤーで再生可能な光学ディスクを提出してください。YouTubeなどのインターネットサイトへのリンクを提出資料とする事、データ便による提出は不可とします。応募資料の返却は致しません。
4. リサイタルのサブタイトルと、企画・構成の趣旨を説明したもの
5. リサイタルの全演目と各曲の演奏時間
※未定は一切不可とします。

●結果発表
募集締め切り後、協会理事会にて審査を行い、2021年1月末日までに二企画の採用を決定し、協会ウェブサイトで公表します。

●応募先・問合わせ先
〒141-0031 東京都品川区西五反田7-19-6-2F
日本現代音楽協会(国際現代音楽協会日本支部)
TEL: 03-6417-0393(平日10:00-17:00)
E-mail: 80th@jscm.net

フォーラムコンサート・レポート

第1夜:田口雅英/橘 晋太郎/高嶋みどり
第2夜:藤原嘉文/ロクリアン正岡

続きを読む

第14回現代音楽演奏コンクール“競楽XIV”第1位受賞の言葉〜谷口知聡(ピアノ)

この度、「第14回現代音楽演奏コンクール“競楽XIV”」にて第1位という結果を頂き、本当に嬉しく思います。新型コロナウイルス感染拡大という困難な状況にも関わらず、徹底した感染対策のもとで演奏する機会を与えて頂きましたこと、審査委員の先生方をはじめ日本現代音楽協会の関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。

この“競楽”というコンクールは、現代作品の演奏を学ぶ身にとって、現代音楽を第一線で牽引されてきた作曲家・演奏家の先生方に、演奏を直接聴いて頂くことのできる大変貴重な機会であり、このコンクールで演奏すること自体が、私にとってはとても特別なことでした。それに加えて、このコンクールの大きな特徴である、演奏する楽器や編成に制限がないこと、ソロでも団体でも参加できることから、普段なかなか聴くことのできない作品の演奏に触れることができると同時に、出場にあたって自分の楽器の特徴や魅力について改めて向き合うきっかけともなり、多くを学ばせて頂きました。

今回2回目の挑戦で初めて本選に進むことができたのですが、初めての挑戦から今日に至るまでの2年間、私を成長させて頂いたのは、御世話になっております先生方の御指導と、なにより作品との出会いだと感じております。特に本選で演奏致しました、権代敦彦さんの《耀く灰》は、3年前に初めて聴いてからずっと虜になり続けている作品で、この作品との出会いがなければ、今回このような賞を頂くこともできなかったと思います。

今回の受賞をきっかけに、より多くの方、そして作品に出会うことができますならば、それほど幸せなことはありません。私自身、未熟で学ぶことが山積みですが、これから微力ながら少しでも現代作品の演奏に携わらせて頂けるよう、より一層精進してまいります。

 

▼第14回現代音楽演奏コンクール“競楽XIV”審査結果はこちら

第37回現音作曲新人賞受賞の言葉〜根岸宏輔

この度、第37回現音作曲新人賞を受賞しました根岸宏輔と申します。

今回、音楽として未熟な作品であるにもかかわらず、フルートの多久潤一朗さん、クラリネットの菊地秀夫さん、ヴィオラの甲斐史子さんという豪華な演奏家によって、東京オペラシティという素晴らしいホールで拙作を演奏していただけたこと、そして何より新人賞・聴衆賞をいただけたことを、とても嬉しく思います。

この作品を作曲する際、音の微細な動きと少ない音数の中で素敵に響くよう常に心掛け、それでいて容易に掴み取ることの出来ないような繊細な音の世界を表現できるよう努めました。一人の作曲家として、自分にしか表現できない音楽を作曲することが目標であり、今回の機会は、その目標の実現のためには非常に重要なものであったと感じます。

リハーサルの段階では、演奏家を記譜の中に拘束しようとしていましたが、コンサート当日での自由で洗練された演奏には圧巻の表現力と説得力があり、演奏時間十数分の間、思わず呼吸を忘れる程聴き入ってしまいました。まさに「自分よりも自分の作品を理解している演奏家」を見たような初めての感覚でした。それと同時に、自分の記譜能力の低さを痛感しました。そういった無責任な書法であっても、一つの芸術作品として完成させてくださった演奏家の方々には頭が上がりません。

それらの体験を含め、実際に演奏されることで、学べるものや得られるものの多さを改めて認識することが出来ました。

また、自分以外の入選者の方々の作品を間近で聴き、いくつか譜面を見せていただけたことで、自分には生み出せない音が多く見受けられ、とても勉強になりました。そういった機会をいただけたことも、非常に有り難く思います。

今日のように、開催が危ぶまれるような情勢であっても、新しい音楽が生み出され、演奏されるということは、現代音楽の発展や若い作曲家の成長という側面において素晴らしいことであると身をもって感じました。そこにはやはりコンサート運営関係者の、徹底した配慮が必要不可欠であり、そういった方々の慎重な対応の下で、実際にコンサートが開催され、作品を演奏していただけました。拙作に関わってくださった全ての方々に感謝しております。

今後も音楽活動を続けていこうという自信になりました。

ありがとうございました。

▼第37回現音作曲新人賞審査結果はこちら