この度、山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”にて第1位という結果をいただく事ができ、本当に嬉しく思います。この“競楽”というコンクールは1945年以降の1〜6名までの編成の楽曲であれば自由に自分の魅せ方をプロデュースできる他に類を見ないコンクールです。
私は学生時代から現代音楽に強い興味を持っていましたが、公の場での演奏機会がなく、競楽の存在を見つけた際『このコンクールに参加すれば公の場で現代音楽を演奏する事ができる!しかも素晴らしい審査委員の方々に聴いていただける!』と思い、応募させていただきました。
いざ参加してみると楽器や編成、楽曲も本当に多種多様だと感じましたが、予選からスタッフの方々が隅々まで丁寧にサポートしてくださり(特にステージの配置など)本選でも照明の細部のこだわりまで要望を聞いていただき、参加者に寄り添って対応して下さいました。スタッフの方々のご協力に深く感謝申し上げます。
予選では、いつか挑戦してみたいと思っていた西村朗先生の「無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番〈霊媒〉」、本選では、私がこれから現代音楽に取り組むにあたって自分の糧となり、挑戦にもなるIannis Xenakisの「Mikka《S》」、そして自分にとって現代音楽の入り口となり、今大会で絶対に演奏しようと決めていた細川俊夫先生のヴァイオリンのための「ウィンター・バード」を演奏させていただきました。それぞれの作品には本選での意気込みでも書かせていただいたような、テーマや特色、作曲家の個性が色濃く反映されています。
自分にとって現代音楽を演奏することは、その作品の個性と向き合う事、作品の力を観客に伝えるためにどんな風に魅せるのか、舞台上では”伊勢宥奈”という殻を突き破って、何がなんでも作品のエネルギーを伝えなけばならない責任があると思います。これはマティアス・ピンチャー氏の言葉をお借りしたもので、「サントリーサマーフェスティバル2021 サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.43 作曲ワークショップ」にてピンチャー氏が仰っていた、「作品が作曲者から奏者の手に渡った瞬間に、責任も奏者にバトンタッチする」という言葉で、強く感銘を受けたと同時に、私にとって生涯忘れられない言葉となりました。この言葉を常に心に留めて作品と向き合っていきたく思います。
私が現代音楽という素晴らしい世界に足を踏み入れることができたのは友人達と先生方のおかげであり、私一人では今回の受賞まで辿り着く事ができませんでした。最後になりましたが、審査委員の先生方、日本現代音楽協会の皆様、そして現代音楽の世界へ導いてくれたすべての方々に心から感謝申し上げます。
▼山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”審査結果はこちら。