山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”本選会
2024年12月22日(日)12:50開場 13:00開演|けやきホール(代々木上原)
▼以下演奏順。全11組。聴衆賞の投票用紙を12:50〜13:00の開場時間に配布します。
▼本選演奏曲
山中惇史/SAKURA(2017)
福士則夫/シリカ ピアノとヴィブラフォンのための(1977)
今回演奏するSAKURA(2017)とシリカ(1977)はピアノとヴィブラフォンのデュオ作品であり、40年もの作曲された時期が異なりますが、どちらも両楽器が織りなす水晶のような輝かしい世界観が特徴的です。
美しく柔らかい音色から鋭く硬質な音色まで、私たちが考えるありのままの音楽を表現できるよう長い時間をかけて作り込んだプログラムです。
ピアノとヴィブラフォンが奏でる音楽の煌めきを、ぜひお楽しみください。
◎プロフィール
八島伸晃(ピアノ)桐朋学園大学音楽学部ピアノ科および作曲科を卒業。 2013年度桐朋学園作曲作品展、New York City Electroacoustic Music Festival 2016に自作品を出品。第17回ローゼンストック国際ピアノコンクール入賞。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにてMarie-Catherine Girod氏のマスタークラスを受講。 これまでにピアノを山田富士子、作曲を三瀬和朗、久木山直、ジャズピアノを若井優也各氏に師事。
福本柊(ヴィブラフォン)熊本県天草市出身。9歳より小学校の部活で打楽器を始める。第6回日本学校合奏コンクールソロ部門高等学校の部において、金賞並びに文部科学大臣賞を受賞。第4回東京国際マリンバコンクール第4位。第28回KOBE国際音楽コンクール奨励賞。大学内の優秀者選抜によるソロ・室内楽定期演奏会に出演。打楽器を菅原淳、神谷百子、田代佳代子、山口大輔、柴原誠、ジャズヴィブラフォンを大井貴司、作曲・編曲を中橋愛生の各氏に師事。東京音楽大学を給費奨学生として卒業し、現在、東京音楽大学大学院修士課程2年に在学中。
▼予選演奏曲
福士則夫/メタ ピアノと打楽器のための(2021)
▼本選演奏曲
Iannis XENAKIS/KEREN pour trombone solo(1986)
田中吉史/Gioco di braccio e labbra per trombone(2010)
Mike SVOBODA/Konzertetüden für Soloposaune Nr. 3 Tube(2008)
ここの度、競楽の本選に出場できますことを大変光栄に思います。
留学するまでは演奏する機会どころか、学ぶ機会すらなかった現代音楽ですが、Mike Svobodaという現代音楽におけるトロンボーンの第一人者にバーゼル音楽院で習うことが出来、こうしてコンクールに参加をするまでになってしまったのですからなんとも不思議なものです。
本選では、Xenakisの《KEREN》では特殊奏法を、田中吉史氏の《Gioco di braccio e labbra》ではスライドの動きを、Svobodaの《Konzertetüden für Soloposaune Nr. 3 Tube》ではバルブの操作と、それぞれがトロンボーンの魅力を全く違った角度から味わうことのできる3曲を演奏します。楽器、声種、楽器編成に制限がない《競楽》という場で競い合うのに申し分のないプログラムであると確信しております。
歌心とライブ感を大切に全力で演奏しますので、楽しんでいただけましたら幸いです。
◎プロフィール
洗足学園大学音楽学部、東京藝術大学音楽学部別科を経て、バーゼル音楽院修士パフォーマンス科および修士ソリスト科を修了。留学をきっかけに現代音楽と古楽を演奏するようになる。2011年ルツェルン音楽祭現代音楽部門にアンサンブルメンバーとして出演。第11回Premio Citta’di Padova(イタリア)において管楽器部門3位入賞。第3回日本トロンボーン・コンペティション一般の部において第1位受賞。
▼予選演奏曲
Georges APERGHIS/Ruinen pour trombone(1994)
▼本選演奏曲
武満徹/Distance(1972)
石田早苗/秋津の舞(2013)
競楽Xで入賞し12年という月日が経ちました。恩師の日本の作曲家や作品に対する思いや繊細な音色に憧れ、作品に自分なりの色をつけてみました。これからも日本の文化や「とき」を大切に演奏していきたいです。
武満徹/Distance
この作品はオーボエ奏者ハインツ・ホリガー氏の委嘱により1972年に作曲された。その後、パリ国立高等音楽院サクソフォーンクラスのクロード・ドラングル教授がサクソフォーン用に楽譜を書き直し演奏が認められた。「ディスタンス(距離)」は音色・密度・音量の遠近、音程・強弱・アーティキュレーションなどの奏法上の極端な距離を表す。リズムの緩やかな波、奏者の瞬間に生きる動的な状態が音を生き生きと息づけて存在させていく作品
石田早苗/秋津の舞
パリ音楽院の同級生で「飛翔」を意識して委嘱した作品。バラエティに富んだトンボの舞のごとく、伸縮性のあるリズムと躍動感ある音の動き、それに様々なニュアンスを加え表現の可能性を追求した。タイトルに古語の”秋津”を使用したのは古くは日本の国土を指して秋津島と異名があったそう。現在パリ在住で、いつも心にある母国への思いも込め作曲。
◎プロフィール
香川県出身。パリ国立高等音楽院サクソフォーンクラスを一等賞、メイヤー賞受賞にて卒業。第四回アドルフ・サックス国際コンクールセミファイナリスト。シュトックハウゼンコンサート(ドイツ)に’08’09’10’13年と出演し全年演奏家賞受賞。’13年日本現代音楽協会・朝日新聞社主催現代音楽演奏コンクール“競楽X”入選。’20年7月発売松平頼暁先生のCD「声楽作品集」に参加。同年11月よりCD「イニシャルS」を発売し、レコード芸術特選版に選ばれる。’23より横浜市泉区文化ホールアーティスト。’24横浜市民広間演奏会オーディションに合格。日本サクソフォーン協会運営委員。
▼予選演奏曲
Bruno MANTOVANI/Bug(1999)
Christian LAUBA/KABUKI(2013)
▼本選演奏曲
Antal DORÁTI/Cinq pièces pour le hautbois(1980-81)より 1. La cigale et la fourmie (アリとキリギリス)
西村朗/迦楼羅 独奏オーボエのための(2007)
私が目標とする最も画期的なコンクール “競楽” XVI 本選に出場させていただけることとなり、大変光栄でございます。
本選には二曲を準備しました。はじめは、20世紀の著名な指揮者アンタル・ドラティが作曲した小品《アリとキリギリス》です。今や多くのオーボエ奏者にとってお馴染みの楽曲ですが、その定番にあえて正面から組み合いたいと思いました。キリギリスが寒さに震え、息絶え絶えに嘆き懇願するシーンが私のお気に入りです。
そしてもうひとつが、西村朗作曲の《迦楼羅》です。作曲者は、鳥の頭部と人間の胴体をもつ迦楼羅(かるら)像の “千数百年にわたっての沈黙” にたいし、“心にイメージしたこの鳥人の声を模したオーボエ曲で、その沈黙に語りかけ、沈黙を揺さぶってみたいと思った” と記しています。この曲を演奏することへの私個人の想いは、文字数に限りがあり殆どを割愛せざるを得ませんが、約言するならば、いまやその沈黙の一部となられた西村さん自身、その想念をも、私は演奏を通して揺さぶってみたい、彼に語りかけたいということなのです。
◎プロフィール
オーボエを戸田智子、小畑善昭、池田昭子、吉井瑞穂、佛田明希子の各氏に、バロックオーボエを三宮正満氏に師事。東京藝術大学を卒業後、現在同大学院音楽研究科に在籍し、古楽および現代の音楽における奏法や解釈を研究している。これまでにアンサンブル室町、オーケストラ・ニッポニカ等の公演をはじめ20世紀以降の作品演奏に多く携わる一方、東京藝術大学バッハカンタータクラブの演奏委員長(音楽監督)を務めるなど、バロック音楽作品の演奏機会も多い。
▼予選演奏曲
Drake MABRY/Lament for Astralabe for Solo Oboe(1981)より Interlude、Continuum、Chorale、Cadenza
▼本選演奏曲
Luciano BERIO/Six Encores(1965-1990)
Brin / Leaf / Wasserklavier / Erdenklavier / Luftklavier / Feuerklavier
Christophe BERTRAND/HAÏKU(2008)
この度は、憧れのコンクールで本選に出場させていただけることを大変嬉しく光栄に思います。
ルチアーノ・ベリオの《6つのアンコール》は、それぞれが特定の人物に捧げられ、「芽」、「葉」、「水のクラヴィア」、「地のクラヴィア」、「大気のクラヴィア」、「火のクラヴィア」とタイトルが付けられています。個々の性格を有しながらも即興性と抒情性は共通しており、豊かな音響の世界を探求した作品です。
フランスの作曲家クリストフ・ベルトランは、29年の短い生涯において鮮烈な作品を数多く残しました。今回演奏する《HAÏKU》は、日本の定型詩である俳句に着想を得た作品で、3つの部分から構成されています。俳句と同じく、短い時間の中に多様なアイデアが凝縮され、その中で情景や感情が鮮やかに描かれています。
演奏者として、2人の作曲家のメッセージを皆さまにお届けできましたら幸いです。
◎プロフィール
愛知県出身。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。市川市文化振興財団第1回即興オーディション優秀賞受賞。第2回ウィトゲンシュタイン記念 左手のピアノ国際コンクール 作曲プロフェッショナル部門入選。作曲を上田真樹、渡辺俊哉の各氏に師事。ピアノをJML音楽研究所現代音楽ピアノ演奏法講座にて中村和枝氏に師事。
▼予選演奏曲
渡辺俊哉/アラベスク(2003)
▼本選演奏曲
三善晃/ピアノのためのプレリュード シェーヌ(1973)
この度は競楽の本選で三善先生の作品を演奏できることを嬉しく思います。
予選では私の尊敬する作曲の師、鈴木輝昭先生の作品を演奏いたしました。コンクールを通して自分自身のルーツをたどることを考え、本選では鈴木先生の師にあたる三善先生の作品を選びました。
1970年代初期から三善先生の不定量記譜の書法が確立されてきます。また〈レクィエム〉や〈オデコのこいつ〉をはじめ、音が強烈で厳しい作品が多くあります。〈シェーヌ〉もそのひとつと言えるでしょう。〈シェーヌ〉は「鎖」を意味し、24の前奏曲が鎖のように繋がって一つの持続をつくります。また全曲を通して演奏者の身体や精神の限界を超えるような書き方をされています。
「三善先生」と呼びつつも実際にお会いしたことはございません。しかし私自身は作曲活動においても、三善先生の音楽からとても影響を受けています。会場の皆様と三善先生の音楽を共有できることが楽しみです。
◎プロフィール
埼玉県立大宮光陵高校音楽科、桐朋学園大学ピアノ専攻を経て、現在同大学院修士課程作曲コース2年に在籍。これまでに作曲を鈴木輝昭、加藤真一郎、清水篤、ピアノを清水和音、加藤真一郎、田尻桂、中井恒仁の各氏に師事。第34回朝日作曲賞(合唱組曲)佳作入選。桐朋学園成績優秀者による第108回室内楽演奏会、第46回作曲作品展に出演・出品。学内にて三善晃氏の作品個展「三善晃の調べ」を企画・開催。
▼予選演奏曲
鈴木輝昭/ピアノのためのムーヴマン・ソノリテ(2022)
▼本選演奏曲
八村義夫/マニエラ フルートのための(1980)
Matthias PINTSCHER/beyond (a system of passing) for flute solo(2013)
この度は、競楽の本選で演奏する機会をいただき、大変光栄に思います。今回私が演奏する曲の紹介をさせていただきます。
八村義夫/マニエラ フルートソロのための
八村義夫(1938-1985)は感情を作品に反映させる、表現主義を圧縮させた抒情豊かな作風であると知られています。同じように表現主義的であったルネッサンス時代の作曲家カルロ・ジェズアルドを好んでいたそうで、この曲はジェズアルドへのオマージュとして書かれています。”日本の伝統楽器である能管のようなアクセント”という指示もあるので、日本的な側面も見られる作品です。
Matthias PINTSCHER/beyond (a system of passing)
Matthias, Pintscher(1971-)は指揮者としても有名な作曲家です。この曲はザルツブルク音楽祭の委嘱で、2013年にパユによって初演されました。画家であるアンゼルム・キーファーの作品から着想を得ているそうで、フルートの様々な特殊奏法を使用した極めて難易度の高い作品となっています。
今回はコンクールという形ではございますが、ぜひこの曲を楽しんでいただけたら幸いです。
◎プロフィール
12歳からフルートを始める。現在、桐朋学園大学フルート専攻 4 年に在籍。 第36回TIAA全日本作曲家コンクールソロ部門第二位。第10回刈谷国際音楽コンクールフルート部門一般の部奨励賞。これまでにフルートを大崎麻琴、片爪大輔、神田寛明、白尾彰、 小池郁江の各氏に、室内楽を泉真由、白尾彰、篠崎靖男、松波匠太郎、蠣崎耕三、上原宏の各氏に師事。 23 年度からあわせて同大学作曲副専攻。作曲を正門憲也氏に師事。
▼予選演奏曲
Brian FERNEYHOUGH/Cassandra’s Dream Song(1970)
▼本選演奏曲
松村禎三/ヴィブラフォンのために~三橋鷹女の俳句によせて~(2002)
この楽曲を本選会で演奏できることを大変光栄で嬉しく思います。
松村禎三氏の「ヴィブラフォンのために〜三橋鷹女の俳句に寄せて〜」は、名前の通りヴィブラフォン独奏のための作品です。三楽章によって構成され、三橋鷹女の三つの俳句がそれぞれの楽章のタイトルにあてられています。
I 鴨翔たばわれ白髪の媼とならむ
II 老いながら椿となって踊りけり
III この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉
いわゆる特殊奏法は使用せず、オーソドックスな奏法のみを用います。
松村氏がこの楽曲に込めた「新たな可能性の挑戦」と「真にリアリティのある音のみの追求」を全霊を持って演奏します。半音の重なりや半音の連なりに美しさ、憂い、儚さを感じていただけると幸いです。
◎プロフィール
武蔵野音楽大学卒業。ドイツ国立カールスルーエ音楽大学へ留学。同大学大学院修士課程にて満場一致の最優秀の成績を得て帰国。2011年バーデン文化財団主催国際音楽コンクール「Kulturfonds Baden Wettbewerb」第1位受賞。第31回日本管打楽器コンクール・パーカッション部門第2位受賞。Studio N.A.Tより無伴奏打楽器独奏によるCD「I Ching」をリリース。
▼予選演奏曲
山口恭範/コナンドラム(1996)
▼本選演奏曲
Iannis XENAKIS/Psappha pour percussion solo(1975)
ヤニス・クセナキス(1922〜2001)はルーマニア生まれのギリシャ人。
「プサッファ」は彼が初めて作曲した打楽器独奏曲であり、曲名は古代ギリシャの女流詩人サッフォーの名前が使われています。
この曲は2つのリズム(古代ギリシャの韻律に基づくリズム、数学の概念を用いたリズム)を主軸に構築されています。曲全体にこれらのリズムが散りばめられ、変奏、断片、逆行などあらゆる形となって現れます。
楽譜は一般的な五線ではなく、マス目と黒点のみ書かれたグラフのような譜面であり、小節や音価も書かれていません。
使用する楽器は、奏者が六つのグループに「木質、膜質、金属」の各性質を持った楽器群を任意に選択します。
最後になりますが、本選の舞台に出場できることを光栄に思います。自分にとって「プサッファ」は挑戦であり自身の音楽を成長させてくれる曲だと感じています。打楽器の音色をお楽しみいただけたら幸いです。
◎プロフィール
千葉県成田市出身。15歳の時に打楽器と出会い、その魅力に惹かれて始める。現在洗足学園音楽大学打楽器コース3年次在学中、石井喜久子氏に師事。2023年度、実技試験において成績優秀者として表彰される。これまでにJoseph van Hassel氏のマスタークラス、富士河口湖音楽祭2024 第5回打楽器・マリンバマスタークラスに合格。
▼予選演奏曲
小野史敬/独奏小太鼓のためのクロックスピード(2017)
▼本選演奏曲
Christophe BERTRAND/Ektra pour flûte seule(2001)
金子仁美/遠心 フルート・ソロのための(1996)
この度、本選にて演奏できる機会を頂けたことを大変嬉しく思っております。
1曲目に演奏いたします「Ektra」はギリシャ語で憎しみを意味し、同時に『電気』という言葉のもじりもかかっています。短い3つの楽曲で構成され、楽譜には「稲妻のように」「非常に暴力的に」などの指示が書かれています。3曲それぞれに強烈な暴力性をもちながらも、パズルのように緻密に組み立てられた楽曲からは確かな統一感が感じられる作品です。
2曲目「遠心 フルートソロのための」は、はじめにFaの音で表された「ある存在」が姿を現し、それが次第に、環境の変化や時間の経過といった他者の力によっていつの間にか変えられてしまう。そして、元居た場所から遠く離れていってしまう様子が表現されています。
1曲目に激しい憎しみの感情を吐き出し、2曲目では不本意に抗えずに変えられてしまう、今回のプログラムは人間の様相に重ねて聴くとよりお楽しみ頂けるかと思います。
◎プロフィール
山形大学地域教育文化学部音楽芸術コース首席卒業。国立音楽大学大学院音楽研究科修士課程フルート専攻修了。 これまでにフルートを菅原寿恵、佐久間由美子、吉岡次郎、坂上領の各氏に師事。 第20回浜松国際管楽器アカデミーにてジェフリー・ケナー氏のクラスを受講。Wiener Musikseminarにてバーバラ・ギスラー=ハーゼ氏のマスタークラスを受講。第22回長江杯国際音楽コンクール一般部門第1位ならびに審査委員長賞受賞。
▼予選演奏曲
Yan MARESZ/Circumambulation(1993)
▼本選演奏曲
Iannis XENAKIS/MIKKA «S» pour violon solo(1976)
細川俊夫/ウィンター・バード ヴァイオリンのための(1978)
1曲目にはI.クセナキスの「MIKKA «S»」を演奏します。20世紀の偉大なる作曲家、そして建築家でもあったクセナキスですが、その楽譜からはまるで建造物を作り上げるかのような、1ミリのズレも許されない作曲美学というものを強く感じます。 しかしそれは決して平坦なものではなく、そのドラマティックな隆起はまるで彼の建築作品の芸術性そのものとも言えます。 本選では楽譜の中の彼の意識と共に舞台上で音楽を構築するかのよう演奏したいと思います。
2曲目の「ウィンター・バード」は、作曲者である細川俊夫先生がベルリン留学時代に初めて公に発表された作品です。 無実でありながら投獄された、韓国の詩人である金芝河(キム・ジハ)の詩に触発されて作曲されました。
夢を見る 鳥になる夢を
鳥になり どこかへ 翔び去る夢を
狂ったように
(金芝河「苦行-1974」)
細川俊夫「魂のランドスケープ-1997」より
何度も低い音域から高い音域へ向かおうとする様は、まるで自由の奪われた鳥が籠の向こうの大空を目掛けて何度も羽を羽ばたかせるようです。そこには希望すら淡く、薄暗い夢の中のような情景が楽曲全体を通して感じられます。
私は学生時代から作曲家や現代音楽を愛する演奏家の友人達に恵まれて、いつかこの競楽へ挑戦したいと考えておりました。この度はこのような素晴らしい機会を頂けて本当に光栄に思います。 表情の全く違う二つの作品、それぞれの素晴らしい音楽の力を私の演奏を通して皆さまに届けることができたら幸いです。
◎プロフィール
山形県東根市出身、3歳からピアノを、4歳からヴァイオリンを始める。これまでに草津夏期国際音楽アカデミー、調布国際音楽祭、Archi in Villa Baruchelloなど国内外の音楽祭に参加しPaolo FranceschiniやDora Bratchkovaのマスタークラスを受講。これまでにヴァイオリンを犬伏亜里、木村恭子、鈴木亜久里、金川真弓の各氏に師事。東京音楽大学卒業。
▼予選演奏曲
西村朗/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番〈霊媒〉(2005)