福士則夫のチビテッラ日記〜第9回〜

●第9回「いよいよ出番」

15日(火)、運命のプレゼンテーション当日、ディエゴがウンブリチッドの駅まで通訳の藤谷奈穂美さんを迎えに行くので車に同乗する。13:38到着の一両編成の電車はイタリアにしては珍しくオンタイムで到着。彼女は城の近くのペンションをインターネット予約したそうで興味がてらそこまで付き合うが、ウンブリアの丘を一望する素晴らしい眺めではあるものの、この田舎にして100ユーロはプール付きでもチト高い。普段はプレゼンテーション直前に会場に滑り込むのだが今日はTシャツを脱いで早めに会場へ入る。

 

今回の滞在中最も緊張した1時間

今回の滞在中最も緊張した1時間

今日の本番に備え事前にジェシカに英文原稿の発音をチェックしてもらい、鏡の前でも練習したのだが聴衆という相手が居るとすんなり口が動かず、英語力の貧しさをつくづく痛感する。CDで音を流している間に呼吸を整え、次の原稿に目を通し、本番がまずは順調に終わったという感触を得たのであったが、その後の時間が実はいつもと様子が違った。普段行われるプレゼンテーションは英語による2、3の質問の受け答えが有るだけで型どおりに終わるのだが、この日は英語の質問がイタリア語に訳されてディエゴから通訳の藤谷さんに行き、私と日本語で受け答えをしている間に、質問に対して横からフランス語が入りで英・日・伊・仏の4ヶ国語が乱れ始める。笙と能管とオーケストラの作品「時の橋」がホラー映画の音楽みたいとの発言に対してイタリアの絵描きサンドラが「始めてこういう現代音楽を聴くからだ」とややヒステリックに声高にしゃべりはじめ(藤谷さんが後でそう話してくれたのだが)芸術とは何か、から現代とは、に至るまでもう混乱のほかない状態で終わる。最後は事の成り行きをただ呆然と見ているだけの状況で、参加できない自分としては不本意だったがとにかく唯一の義務からは解放されたわけである。

 

ようやく終了

ようやく終了

スカGは速いよネ!

スカGは速いよネ!

夕食は打って変わって藤谷さんも交えて珍しく遅い時間まで皆と談笑するが、地元のワインはもちろん、蒸留した辛めのグラッパが殊のほか旨かった。こちらに来て最初の自己紹介のような短いプレゼンテーションの時、「クラッピングリズム」が好評だったので、シリアスな作品の代わりにクラッピングリズムを下敷きにしたノマド版「ケス・キス・パス」にすれば映像も見られて楽しかったかもしれないなと思いつつ、なかなか寝付けないまま一日が終わる。

★次回第10回「地獄の買い出し」予告

7月17日(木)、このところ買出しに出掛けるのがいつなのか全く情報がない。城での生活も1ケ月が過ぎ、慣れてきた連中は勝手気ままに車を借りて町のスーパーに行っているのであろう。城の4階にある小さなキッチンにはミルク、珈琲、紅茶、バター、シリアルなどが用意されていて勝手に使えるのであるが、パンやジャム、チーズなどは自分で調達しなければならない…

更新は10月5日(水)です。お楽しみに!