第15回現代音楽演奏コンクール“競楽XV”

 第15回現代音楽演奏コンクール“競楽XV”本選会

2022年12月25日(日)13:20開場 13:30開演|けやきホール(代々木上原)

 

 

 

▼以下演奏順。全9組。3組毎に休憩約20分。聴衆賞の投票用紙を開場中に配布します。

風見瑶子(ピアノ)

▼本選演奏曲
湯浅譲二/内触覚的宇宙(1957)
Elliott CARTER/Piano Sonata I(1945-6)

 この度、競楽の本選会で演奏させていただく機会をいただきまして、大変嬉しく思っております。

 湯浅譲二の《内触覚的宇宙》は、哲学的なイメージに基づくストーリー性のある音楽です。私は、無色透明の水に一滴また一滴と、色々な表情が広がっていくようなイメージを持っています。湯浅は、「人間は個人性と普遍性の両方を持っており、その全てを含めた宇宙観の表現こそが音楽」と語っています。

 エリオット・カーターの《ピアノソナタ 1楽章》は、およそ75年に渡って息の長い創作活動を続けたカーターが、「私の音楽の中で新しい傾向の始まりとなった作品」と語っています。88鍵盤を最大限に利用した幅広い音域の使用、倍音列による響きの構築、多様なペダルの使用等から、カーターの現代グランドピアノへの響きの探究を感じられます。

◎プロフィール
大阪府出身。3歳よりピアノを始める。京都市立堀川音楽高校卒業。第8回ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japan 全国大会金賞。第22回日本演奏家コンクール特別賞。10歳の時、第4回エボニー&アイボリーコンサート出演。恵比寿にある音楽カフェ、「アートカフェフレンズ」にてモーニング演奏を担当。現在、東京音楽大学大学院音楽研修科器楽専攻鍵盤楽器研究領域修士課程1年次在学中。石井克典、大竹紀子の各氏に師事。

▼予選演奏曲
Elliott CARTER/Two Thoughts About the Piano(2005/6)

 

 

天野由唯(ピアノ)

▼本選演奏曲
新実徳英/ピアノのためのエチュード―神々への問い―第3巻(2017)

 この度初めて“競楽”に挑戦し、本選にて演奏する機会をいただけましたことを心より嬉しく思っております。今回演奏いたします新実徳英氏の『ピアノのためのエチュード―神々への問い―第3巻』は、3曲の小品より構成されています。それぞれの題名と、私なりの解釈を述べさせていただきます。

VII「宇宙は切れぎれの余韻でできている?」
…ある音から次の音が生み出され連鎖していく様は、まさに作曲のプロセスそのものであり、そして宇宙の成り立ちそのものでもあるように思います。

VIII「万物は流転する、神よあなたもですか?」
…回転するような音型を繰り返しながら変奏を重ねるうちに、次第に自分の足元が揺らぎ天地がひっくり返るような錯覚を覚えます。

IX「ビッグバンの直前はどんなだった?」
…素材を同じくしてグラデーションのように変化し膨張し続ける、0から1が生まれるその直前の様子が描かれているように思います。

 この作品の、人智を超えた壮大な世界を皆様にお届けできましたら幸いです。

◎プロフィール
東京藝術大学音楽学部作曲科4年次在学中。作曲及び作曲理論の研鑽に努めると同時に、新曲初演や室内楽演奏にも積極的に携わる。ショパン国際ピアノコンクールin ASIA第21回大学生部門銀賞・第23回コンチェルトB部門金賞及びコンチェルト賞。第8回下田国際音楽コンクールプロフェッショナル部門第4位(ピアノ連弾)。室内楽セミナー秋吉台の響き2021参加。現在作曲を安良岡章夫氏、作曲理論を林達也氏、ピアノを若桑茉佑氏、ピアノ及び伴奏法を藤田朗子氏に師事。

▼予選演奏曲
西村朗/オパール 光のソナタ(1998)

 

 

丸山里佳(ソプラノ)

▼本選演奏曲
服部和彦/Maila I, II, III(2011-14)
John CAGE/A Flower(1950)
Mauricio KAGEL/Der Turm zu Babel(2002)より 1. Dänisch, 2. Deutsch, 3. Englisch

 ファイナリストとしてこの場で演奏できますこと、大変光栄に感じております。演奏する3曲を簡単にご紹介致します。

Maila
マイラはプレアデスの女性。「意味の無い言葉やオノマトペを羅列することで、その面白さを作品化したものである」(作曲者)
「見し夢の 忘るるときも なかりせば」「雨の降る 春は朧の 山里の」の言葉に導かれ、その湿度も色合いも美しく薫る。

A Flower
声とピアノのために書かれた作品だが、今回は一人で演奏。人知れず咲く一輪の花に流れる時間を表現したい。

Der Turm zu Babel(バベルの塔)
聖書の「主は『さあ我々は下って、そこで彼らの言葉を乱し、互いに通じないようにしよう』と仰られた」の箇所が、曲ごとに異なる言語で歌われる。同じ内容でありながら、それぞれに違った曲調で描かれる。

 結びにこの場をお借りして、楽譜の手配にご協力くださった国際芸術連盟、ヤマハ銀座店、ペータース社の担当者の皆様に心より御礼申し上げます。

◎プロフィール
幼少より桐朋学園大学附属子供のための音楽教室にて、ピアノとソルフェージュを学ぶ。桐朋学園大学音楽学部マリンバ専攻卒業、同時に副専攻声楽修了。卒業後、声楽に転向。同大学研究科声楽専攻を修了後、渡独。ハンブルク音楽院 Aufbau課程にて声楽を専攻。修了後帰国し、2021年inc.percussion daysにおいてソロリサイタルを行う。2022年めぐろパーシモンホールにて、世界的打楽器奏者の加藤訓子氏と共演。声楽を大橋ゆり氏、Cornelia Zach氏に師事。

▼予選演奏曲
John CAGE/Experiences no.2(1948)
Luciano BERIO/Sequenza III(1966)

 

 

島田菜摘(打楽器)

▼本選演奏曲
池辺晋一郎/モノヴァランス IV マリンバ等のために(1975)

 この度は素晴らしい機会に恵まれ、大変嬉しく思います。

 今回選曲しました《モノヴァランス IV》では、バチ類を一切用いず、普段より近い距離でマリンバや太鼓と向き合います。楽器そのものに改めて出会うようなこの曲は新鮮でもあり、私にとっては、小さい頃にマリンバの下に寝転がって遊んでいた懐かしい記憶を思い起こさせます。

 他の楽器に比べソロ楽器としての歴史が浅い打楽器を専門にするにあたって、現代音楽に挑戦することは避けて通れませんでした。難解なテーマの作品や奏法・技術の限界を追求するものも多く、体に染み込ませていくのは大変な作業ですが、さまざまな作品をとおして新しい世界に出会い、言葉にできない思いが音となって昇華され、いつも心を救われてきました。

 緊張感あるコンクールの舞台ではありますが、客席の皆様にもそれぞれ感じていただけるものがあるように、心を込めて演奏したいと思います。

◎プロフィール
兵庫県立西宮高校音楽科を経て同志社女子大学音楽学科卒業、同大学音楽専攻科修了。大学卒業時に《頌啓会》音楽賞を受賞。第20回KOBE国際音楽コンクール打楽器C部門最優秀賞・神戸市長賞ほか入賞多数。2015年京都、2019年神戸にてソロリサイタルを開催。

▼予選演奏曲
山口恭範/Conundrum(1996)

 

 

北條歩夢(打楽器)

▼本選演奏曲
Casey CANGELOSI/Tap Oratory(2015)
三善晃/リップル 独奏マリンバのための(1991)

 はじめに、この“競楽”コンクールの本選という歴史ある場で演奏させて頂けるということを大変誇りに思います。聴衆の皆様の興味を引く演奏を心掛けます。

 1曲目に演奏させて頂く「Tap Oratory」の作曲者C.Cangelosiは自身も打楽器奏者であり、とりわけオーディオ+打楽器という編成においては画期的なアイデアを提示し続けています。この曲に於いてもスティックをキャッチする、空中で回すといった本来音の無いアクションに音を割り当てるなどして、新たな表現やリズムの概念の可能性を示唆しています。

 2曲目は私が作曲家としても尊敬している三善晃氏の「リップル 独奏マリンバのための」です。一聴して無調に感じられますが、大枠にはD音を軸にしており、調性的な性格が見え隠れしています。声を演奏として用いるシーンが印象的ですがこれは演出的な意図ではなく、これ以上なくマリンバに蓄積されたエネルギーを放出するための必然的な叫びに、私には聞こえます。
 
◎プロフィール
東京音楽大学科目等履修生2年に在籍。これまでに打楽器を新澤義美、菅原淳、村瀬秀美、西久保友広、柴原誠、作曲を新実徳英の各氏に師事。第15回日本ジュニア管打楽器コンクール本選ソロ部門パーカッションの部/中学生コース 銀賞。第37 回打楽器新人演奏会にて最優秀賞を受賞。現在は演奏活動や吹奏楽の指導のほか、演奏会への編曲作品の提供、卒業試験において自作自演をするなど作編曲活動にも力を入れている。

▼予選演奏曲
Karlheinz STOCKHAUSEN/Zyklus(1959)

 

 

中村淳(フルート)

▼本選演奏曲
Philippe HUREL/Éolia(1982)
藤倉大/Lila for flute(2015)

 前回に引き続き、音楽界の異種格闘技戦ともいえるこの“競楽”本選会にて演奏させて頂ける事、大変嬉しく思います。本選では1人で3種類のフルートを用いて演奏させて頂きます。

 P.Hurel《Éolia》はフルートの可能性を存分に生かした、多種多様な奏法と声が織り成すポリフォニーが特徴的です。藤倉大《Lila for flute》は譜面を再現するクラシカル要素の他に、奏者による自由な選択を兼ね備えておりLIVE感の強い作品となっております。また、1曲の中で楽譜の指定通り、特殊管であるバスフルートとコントラバスフルートを持ち替えて演奏します。アンサンブル楽器としての役割が強いため特殊管を用いたソロ作品はまだまだ少ないですが、“特殊”ではない音楽作品としてのレパートリーを今後も開拓出来たらと思います。

 多彩な出場者による一味も二味も違う音楽に巡りあえる演奏会。どうぞお楽しみ下さい。

◎プロフィール
13歳よりフルートを始める。名古屋市立菊里高校音楽科、東京藝術大学を経て同大学大学院音楽研究科修士課程フルート専攻1年。これまでに20曲以上の新作初演に携わる。第71回全日本学生音楽コンクール全国大会入選。2021年ペルージャ国際音楽コンクール(オンライン)木管楽器部門第1位。併せて現代音楽賞受賞。青少年のための現代音楽演奏講座を受講。現在トラヴェルソを前田りり子に、フルートを神田寛明に師事。2021年「若い芽を育てる会」牛尾シズエ賞。2022年度山田貞夫音楽財団奨学生。

▼予選演奏曲
Brian FERNEYHOUGH/Cassandra’s Dream Song(1970)
Ian CLARKE/Zoom Tube(1999)

 

 

青栁はる夏(打楽器)

▼本選演奏曲
Philippe MANOURY/LE LIVRE DES CLAVIERS(1987-8)より IV. Solo de vibraphone
石井眞木/THIRTEEN DRUMS for percussion solo op.66(1985)

 「Thirteen Drums」を始めて演奏したのは4年前、大学2年生の時でした。あらためて譜面を読むと構成や曲に対するイメージ、楽器のチョイスなど当時とはまったく違った考えを持っている自分に気がつき、とても新鮮な気持ちで曲に向き合えました。この作品は膜質打楽器という響きの少ない楽器のみで演奏されますが、単色な音色であるからこそ引き立つリズム律動感や、ダイナミクスの変化、モノクロ的ではありますが水墨画のように繊細な変化で曲が展開していきます。

 フィリップ・マヌリはフランスの作曲家です。譜面を始めてみたとき音数が多くて大変そう、この曲を理解しながら弾けるのかと言う気持ちになりました。しかし、練習をすると響の生まれる面白さ、消えてゆく面白さなどもっとシンプルなところにある魅力を再認識できました。曲と自分の距離感は作品ごとに違っておもしろいです。

◎プロフィール
埼玉県出身。常総学院高等学校を卒業後、洗足学園音楽大学に入学。13歳より打楽器を始める。2018年度打楽器コース成績最優秀賞受賞。第37回打楽器新人演奏会にて最優秀賞を受賞。打楽器を堀尾伸二、古川玄一郎、竹島悟史に室内楽を山本晶子、石井喜久子の各師に師事。現在洗足学園音楽大学大学院2年在学中。

▼予選演奏曲
Per Nørgård/I Ching(1982)より
2. The Taming Power of the Small
4. Towards Completion : Fire over Water

 

 

福光真由(マリンバ)

▼本選演奏曲
福士則夫/樹霊 ソロ・パーカッションのための(1995)

 福士則夫は日本を代表する現代音楽の作曲家であり、管弦楽、合曲、室内楽曲など様々なジャンルを作曲しています。

 今回演奏させて頂く曲は、菅原淳の委曜により作曲され、1995 年10月に管原淳のリサイタルにより初演されました。使用する楽器はマリンバ1 台とウッドブロック5 つです。冒頭はマリンバとウッドブロックから始まり、16 分音符による同音反復から徐々に音が分散されていきます。右手のメロディ、左手の伴奏といったフレーズが現れたのち 、音楽は急変していく、今までは森の中にいるかのような静けさしかなかった音楽が、突然弾けたように加速していくが、のちに自然と静けさを取り戻し、32分音符による重音で曲は終結します。タイトルは、福士則夫が少年時代、女林に小石を投げて遊んでいた時の記憶からきています。

 今回、競楽の本選会で私の好きなマリンバを演奏させて頂けることに感謝し、会場の皆様にこの曲の世界観を感じて頂けるような時間になれば幸いです。

◎プロフィール
佐賀県立佐賀北高等学校芸術科卒業。洗足学園音楽大学を首席で卒業。13歳より打楽器を始める。第41回全九州高等学校音楽コンクール打楽器部門グランプリ受賞。第1回洗足学園音楽大学打楽器コンクール審査員特別賞受賞。2021年度打楽器コース成績優秀者受賞。第63回佐賀県新人演奏会佐賀県新人奨励賞受賞。若手打楽器奏者の登竜門ともいえる日本打楽器協会主催 第38回打楽器新人演奏会最優秀グランプリ・岩城宏之賞受賞。これまでにマリンバ・打楽器を石井喜久子、關家真一郎、大坪雅子の各氏に師事。

▼予選演奏曲
一柳慧/源流 独奏マリンバのための(1989)

 

 

内山貴博(フルート)

▼本選演奏曲
福島和夫/春讃(1969)
Hans ZENDER/Mondschrift (Lo-shuII) für Flöte solo(1978)

 この度、競楽XV本選会に出演いたします、フルート奏者の内山貴博と申します。

 本選会では、福島和夫作曲Shun-San、Hans Zender作曲Mondshrift (Lo-Shu II) für flöte solo の二曲を演奏いたします。二曲ともアジアの文化に影響を受けて書かれている作品で、どちらも今回初めて取り組む作品なのですが、以前より演奏したいと思っておりました。

 有名なZender編曲の冬の旅を演出付きで観たとき、その音楽が印象に残っており、彼のフルート作品を知るきっかけになりました。

 Mondshrift (Lo-Shu II)は、古代中国の羅書洛書より影響を受け書き上げた連作のLo-shuの中の無伴奏フルートの作品で、息を使った特殊奏法や、子音を用いた奏法が際立った、テクニカルな作品です。

 Shun-sanは重音や微分音を取り入れ、新たな単旋律の可能性を追求している様子が感じられます。静寂のなかに微々たる動きがあったり、音の「間」を奏者に委ねたりと、緊張感の高い作品となっています。

 演奏する二曲は現代音楽ですが、作曲から50年近く経っています。戦後、多数の文化が複雑に絡み合った1970年代、実験的な音楽が残された、とても興味深い時代だと私は思っております。

 皆様の前でこの二曲を演奏できることを、大変楽しみにしております。

◎プロフィール
東京藝術大学入学後、渡仏。パリ地方音楽院、パリエコールノルマルを経て、パリ国立高等音楽院第二課程(修士課程)を修了。国内の現代音楽の公演に度々出演し、積極的にコンテンポラリー作品を取り組んでいる。小澤征爾音楽塾オペラプロジェクトXVIIカルメン、ルツェルン国際夏季アカデミー修了。電子ミクスト音楽作品を中心に取り上げる“spac-e”のメンバー。ムラマツフルートレッスンセンター講師。

▼予選演奏曲
Kaiya SAARIAHO/Couleurs du vent(1998)

—審査休憩—

18:30〜講評、結果発表、表彰式

第1位、第2位、第3位、入選、審査委員特別奨励賞、聴衆賞の表彰を行います。