福士則夫のチビテッラ日記〜第8回〜

●第8回「陶器の町デルータと城壁の町モントーネ」

7月11日(金)、今日は朝9時に出発し、わが町ウンブリッチッドからそれほど遠くない陶器の町デルータに遠足。途中SANTUARIO教会に寄る。ジェシカの説明によると16、7世紀、人が事故や若くして亡くなった折、そのことを陶板に描いて教会に奉納し祈る伝統があるとか。壁、柱一面に当時の陶板がそのままじかに貼り付けてあるのだが、1900年代に入ると交通事故の絵など、かなり生々しい描写になる。

いたる所に貼り付けられた陶版画

いたる所に貼り付けられた陶版画

絵付けの前の鶏型のピッチャー

絵付け前の鶏型のピッチャー

ここから5分もかからぬデルータの街に入ると、何処を見回しても陶器の店しかない。毎晩われわれの食卓の上におかれる鶏型のピッチャーはデルータ産だそうで、ほとんどの連中が買ってはお互いの品物を見せ合っていた。今日の遠足は午前中の早い時間に設定されていて、昼食は城でというスケジュールだったので途中ウンブリチッドのスーパーを横目に見るだけで車は城へ。食物に関して敏感に反応する三人の作曲家は示し合わせて夕方ベスの運転で、あらためてスーパーへ買出しに行く。

今回の滞在中最も緊張した1時間

一つ一つ手書きをしている職人は若い女の人が多い

12日夕食後に隣町モントーネで行われている映画が話題になり車でドライヴ。此処も古い歴史を城砦の壁が物語っていて何層にも色が変わって積み重なっているのは幾多の戦いがあった事を示しているのだろうか。この、さほど大きくもない町のごく小さな広場で行われる野外映写会にピーター・ロードが来て彼の短いアニメを6本楽しんだが、その後に見たアフガンの少女の映画は辛かった。アフガン社会における女性の位置と貧困とテロ抗争を子供の視線で表現しているのだが、これがまだ今も現実なのが重い。いつも明るくて身体の大きなジェシカも沈んでいた。

13日は待ちに待ったメールがようやく復旧したのは幸いだが160通以上の着信メールをチェックする事になり、浮世離れした世界に溶け込んでしまっている自分を思い知らされる。

★次回第9回「いよいよ出番」予告

15日(火)、運命のプレゼンテーション当日、ディエゴがウンブリチッドの駅まで通訳の藤谷奈穂美さんを迎えに行くので車に同乗する。13:38到着の一両編成の電車はイタリアにしては珍しくオンタイムで到着。彼女は城の近くのペンションをインターネット予約したそうで興味がてらそこまで付き合うが、ウンブリアの丘を一望する素晴らしい眺めではあるものの、プール付き100ユーロはチト高いのではないだろうか?…

更新は9月28日(水)です。お楽しみに!