第39回現音作曲新人賞受賞の言葉〜井上莉里

この度は、第39回現音作曲新人賞、併せて聴衆賞を受賞させていただき、大変嬉しく思っております。
今回の現音作曲新人賞に関わってくださった皆さま、私を支えてくださった全ての方々に、心より感謝を申し上げます。

ヴィオリストの安藤裕子氏、甲斐史子氏、チェリストの松本卓以氏、山澤慧氏という素晴らしい演奏家の方々とともに3度のリハーサルを重ねて音楽を作り上げていった時間は私にとってとても有意義な時間となり、東京オペラシティで自分の作品を演奏していただいたこと、たくさんの方々に作品を聴いていただけたことは、とても嬉しく貴重な経験となりました。

オーボエソロのためのピンクノイズ、オーボエとファゴットのためのホワイトノイズを経て、自身のノイズシリーズ3作目となる今回の作品《ブラウンノイズ〜2台のヴィオラと2台のチェロのための〜》は、ヴィオラとチェロのみで構成されますが、この慣れ親しんでいる2つの弦楽器を用いて調弦を大幅に低く変え、新たな音色、新たな表情、そして楽器の可能性を常に模索し続けながら作曲しました。
作品を通して一定のものと、その上で少しずつ変化するものを意識し、その変化がわかるのは人それぞれのタイミングであるという、いわゆる心理学上のアハ体験のようなものを体感していただけていたら幸いです。

作品が音になる瞬間というのは、ほとんどの作曲家にとって一番幸せなことだと思いますが、自分の作品を音にしていただいた本選会では、演奏家の方々から紡がれるブラウンノイズの音楽に、聴いている私たちが飲み込まれていくような感覚に陥り、皆さんと一緒に音楽を共有出来たあの瞬間の雰囲気は今も忘れられられないほど感動しました。

今回のすべての温かくて新鮮なこの経験を胸に、これからも楽しくて面白い作品、そして「自分の音」を生み出していけるように精進します。
本当にありがとうございました。

 

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