●第3回「遠足」
6月25日(水)には各国から招待された芸術家10人のフェローと共に車で1時間足らずの近郊、スペッロまでの遠足。中世の小さな家が丘の上にモザイクのように立ち並び、横道に入ると人のすれ違いもままならないほどの小道が続く。Baglioni 教会のドームにペルージャ生まれの画家ピントゥリッキョの描いたイエス誕生のフレスコ画は思わず触りたくなるほど素晴らしく甘美なものだった。ダーラというイギリス生まれのヴィジュアル作家とコーンアイスをなめなめ坂を下りる途中、彼が話してくれる片言のフランス語によれば(自分も同じ程度なのでホットとするが)、次の目的地ベヴァーニャよりこのスペッロの方が美しい町という。あとで知った事だが、インターンの若い女の子が遠足の前日に目的地の情報をPCに流しているので、その受け売りらしい。
小さな丘の上の至る所に時代の異なる教会があり、洒落たレストランと小さなブティック、それだけで成り立っているように見えるがその全てが長い歴史によって磨かれて、ひっそりとそのままの佇まいを残している閑静な町である。ここから車で30分もしない近さに職人の町ベヴァーニャがある。スペッロから一変、ここはお祭り人間が集う町。夜8時になるとバグパイプのような中世の楽器と太鼓の音につられて人の波が続く。古代遺跡のような広場に机がいくつも並んでいて、コックも給仕人も全て中世の服装なのは夕方から地元の人がボランティアで扮装しているとか。自前のコップを持っていると屋台で5ユーロ払えばワイン飲み放題だが、それほど旨い代物ではない。机の上には皆で注文した鶏型のピッチャーに入ったビールやワインが大量に残ってしまいアメリカ人の作曲家デーヴィッドとダーラの三人で飲み続ける。
通称デーヴィーは夕食の始まる前にいつもスプーンやナイフを顔に貼り付けて人を笑わせているが、それをダーラと二人でチャレンジしめでたく成功。貼り付ける側に息を吹きかけて湿らせておくのがタネである。23日、最初に行われた5分のプレゼンテーションの時でも、デーヴィーは近郊から見学に来ている客がいるのも気に掛けず、ビデオ撮影のディエゴに向かって舌を出し奇天烈な顔を向けて憚らない。おしゃべりでやたらと奇音も連発、何処にでも入り込み首を突っ込む好奇心旺盛なアメリカ人である。
25日は午前中買い物をしたのちに2つの町への小旅行、さすがに疲れて大きなダブルベットにもぐり込み、このことを書き残しておこうと思ったのも一瞬、あっという間に寝入ってしまった。
★次回第4回「予定違い」予告
7月1日(火)、今日で早くもイタリア滞在2週間を過ごしている。気の遠くなるような6週間と思っていたが毎日単調な繰り返しをしていると案外時の経過が早く感じられる。一日のスケジュールはまず7時過ぎに起床…
更新は8月24日(水)です。お楽しみに!