皆さまはじめまして、今回現音作曲新人賞に入選させていただきました久保哲朗です。
本選会では《Relativity by M.C. Escher(エッシャーによる『相対性』)for 4 player》が初演予定です。
テーマに対して自分がどのようなアプローチをしたかはプログラムノートに記したので、ここではお聴きいただく際のポイントについて書いてみたいと思います。今作はタイトルにあるように、オランダの画家エッシャーの版画作品『相対性』(1953)を参照し作曲を行いました。エッシャーといえば、だまし絵が有名で代表作は、“ペンローズの階段”と呼ばれる不可能図形を描いた『上昇と下降』(1960)や“永久機関”を思わせる『滝』(1961)でしょうか。彼の作品はただ「不思議」な世界が描かれているだけではなく、パターン(模様)による無限性の追及、そして特に後期は数学、結晶学的な側面が活かされた緻密さが魅力です。
自分は最近、多層的な時間をどのように構築するかに興味があり、その中で見たエッシャー作品はイメージとぴったり合いそうな感覚がありました。本作品はエッシャー作品のように幾何学的な素材、具体的には単純なスケールや和音の組み合わせによって各セクションが構成されます。
作曲中は、音素材をひっくり返してみたり、セクションを入れ替えてみたり、半分に切ってバランスを取ったり、パターン化してみたり、空間を自由に使って組み立てる楽しさがありました。本選会ではそういった、幾何学性、そしてそこから生まれる「不思議」さを楽しんでいただければ幸いです。
余談ですが今年の夏「Gaudeamus Muziekweek」に参加するため、エッシャーの故郷オランダへ行ってきました。この音楽祭は1949年から毎年夏に開催される現代音楽において代表的な音楽祭です。エッシャー作品は著作権の関係で掲載できないので、せめてオランダの景色でもと思います(笑)。貿易の国であり、オランダ語と英語が二重母国語というように多様な価値観を許容する、とても美しい国でした。
〈現音・秋の音楽展2017〉
第34回現音作曲新人賞本選会
テーマ:地域性と現代性のあらたな交差の可能性
2017年11月17日(金)18:00開場/18:30開演|東京オペラシティリサイタルホール
(1) 青島佳祐/弦楽三重奏の為に(作曲2017年初演)
(2) 丹羽菜月/満たしの“ ”、繋ぎの“ ”(作曲2017年初演)
(3) キム・ヨハン/Unbeknownst – to(作曲2017年初演)
(4) 久保哲朗/Relativity by M.C.Escher(作曲2017年初演)
(5) 萩原晴子/Liquid(作曲2017年初演)
演奏:
多久潤一朗(フルート)(2) 間部令子(フルート)(5) 鈴木生子(クラリネット)(3)(4)
安田結衣子(ピアノ)(2)(4) 小倉美春(ピアノ)(5) 佐原敦子(ヴァイオリン)(1)(3)(4)
阿部哲(ヴィオラ)(1)(3)(5) 豊田庄吾(チェロ)(1)(2)(3)(4) 松川智哉(指揮)(4) 石川星太郎(指揮)(5)
▼第二部:日本現代音楽協会会員作品上演
(6) 南 聡/2つの余禄の心得(作曲2005/06年)
(7) 斉木由美/歓/JOY~ピアノのための(作曲2014年)
(8) 久留智之/人と樹と(作曲2011年)
(9) 久留智之/オーム貝の歌 (作曲1988年初演)
演奏:
井上ハルカ(サックス)(6) 小倉美春(ピアノ)(6)(7) 古川玄一郎(マリンバ)(8)
中山加琳(ヴァイオリン)(9) 鈴木真希子(ハープ)(9)
▼講評・結果発表・表彰式 20:45頃〜
審査員:南聡(審査員長)、斉木由美、久留智之
※就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮下さい。演奏順は変更となる場合があります。
チケット:全自由席 一般2,000円 学生1,000円
東京オペラシティチケットセンター インターネット予約 電話:03-5353-9999
日本現代音楽協会 電話:03-3446-3506 aki2017(a)jscm.net www.jscm.net
主催・お問合せ:日本現代音楽協会(国際現代音楽協会日本支部)
TEL: 03-3446-3506 E-Mail: aki2017(a)jscm.net
助成:一般社団法人私的録音補償金管理協会 一般社団法人日本音楽著作権協会
後援:一般社団法人日本作曲家協議会 一般社団法人日本音楽作家団体協議会