2018年5月5日付で日本現代音楽協会が日本音楽コンクール委員会に対し「日本音楽コンクール作曲部門の審査会に係る変更についての要望と質問」を送付しましたが、同年10月30日に日本音楽コンクール事務局より届いた文書は十分な回答を得たと言い難いものでした。以降、日本現代音楽協会は数度にわたり回答依頼ならびに抗議文を送付しましたが、未だ運営の責任主体であるコンクール委員会から質問に対する十分な回答はいただけておりません(下記回答書参照)。
私どもは現代芸術音楽の作曲家としてこの事態を大変遺憾に感じ、この度、同じ作曲家団体である日本作曲家協議会と協力し、両団体共同で、日本音楽コンクール委員会に改めて抗議の文書を送付いたしました。
2020年3月28日
日本音楽コンクール委員会 御中
特定非営利活動法人
日本現代音楽協会
理事長 近藤 讓
一般社団法人
日本作曲家協議会
会長 菅野 由弘
抗議文
2018年度からの貴コンクールにおける作曲部門の諸変更に関して、日本現代音楽協会は、同年5月5日付の貴委員会宛ての「質問と要望」以来、これまで再三にわたって、その理由についての説明を求めてきました。
貴コンクール作曲部門の審査・選出方法のこの変更は、実質的に、作曲部門の縮小を意味しています。そのことは、本選演奏会の取り止め、そして、審査委員の人数の大幅削減からも明らかです。しかもそうした縮小は、コンクールの他の部門においては行われず、作曲部門だけを対象としたものでした。そうした変更の理由を問う日本現代音楽協会からの質問に対して、これまでのご回答では、貴コンクールが「音楽文化の向上に寄与することを目的として」いることをコンクール規約から引用したうえで、「今回の作曲部門の審査・選出方法の変更もこの趣旨に沿うものであり、詳細についてはご指摘の毎日新聞紙面 [2018年3月6日毎日新聞東京版夕刊掲載の梅津時比古氏による署名記事]でお伝えしたことがすべてです」とあるだけです。そもそも日本現代音楽協会からの「質問と要望」は、作曲部門の審査・選出方法の変更(特に、本選における演奏審査の廃止)が、コンクールの教育的意義を大きく損なうものであり、それが、貴コンクールが目的として謳う「音楽文化の向上」をむしろ妨げることになることを指摘して、善処を求めたものです。
更に、梅津時比古氏が紙上で示した変更の理由のうち、「経費の削減」以外の二理由――即ち、「本選の演奏において、譜面通りに演奏されないことが起こり得る」、そして、「譜面審査の点数と、演奏を聴いての点数に開きが出る場合がある」――について、それらが非論理的で到底納得できるものでないことを指摘した上で、第三の理由である「経費の削減」が作曲部門だけに課せられた理由についての説明を求めました。しかし、それらのいずれについても、貴コンクールは、きちんとした回答を避け続け、昨年7月20日付で差し上げた「再度、再回答のお願い」に対しても頑なに沈黙を守ったままでおいでです。
もし貴コンクールが、公に示し得る論理的な理由もなしにそうした変更を実施したのだとすれば、それは、単に「音楽文化の向上に寄与する」という貴コンクールの目的を裏切るものであるばかりか、作曲部門の軽視、ひいては、作曲というものに対する差別であると言わざるを得ません。日本現代音楽協会と日本作曲家協議会は、作曲家によって組織された団体として、作曲に対するそのような軽視と差別を看過することは到底できません。両団体に所属するすべての作曲家の総意をもって、貴コンクール委員会に対してここに強く抗議します。