特集「現代の音楽展2015」
「現代の音楽展2015」のみどころ
日本現代音楽協会事務局長 佐藤昌弘
新年を迎えまして、皆様の益々のご健勝、ご多幸をお祈り申し上げます。
さて本年2015年は、日本現代音楽協会の創立85周年の年です。その記念の年の最初のイヴェントが、この〈現代の音楽展2015〉「演奏家と創造の現在(いま)」となります。〈現代の音楽展〉と銘打った当協会のコンサートは、今から遡ること53年前の1962年(昭和37年)、当時、現音の委員であった作曲家、芥川也寸志氏の命名によりスタートしました。その初回演奏会は同年12月5日、14日の2夜にわたって東京文化会館小ホールで行われたとのことです。コンサートは松平頼則、諸井誠、松村禎三、間宮芳生各氏等の会員作曲家の作品に、海外の当時の注目作品を交えたプログラムで、若杉弘、高橋美智子、有賀誠、吉田雅夫各氏等の力演により大変好評を博したそうです。〈現代の音楽展〉は芥川氏の尽力でまもなく定期化し、以来半世紀を超えて続く、当協会恒例の春の演奏会シリーズとなったのです。
2015年の〈現代の音楽展〉は全4公演です。「演奏家と創造の現在(いま)」というサブタイトルからも伺えるように、各公演とも1人の演奏家と1つの演奏分野にスポットをあてた企画となっております。新しい音楽作品の創造は、作曲家と演奏家との緊密な協働なくしては成立し得ず、現音の活動の原点といってもよいでしょう。今年の〈現代の音楽展〉は、まさにその原点に根差した4企画なのです。また、とりあげる作品・演奏ジャンルが弦楽器、合唱(声)、管楽器、打楽器というように、多岐に渡っていることも特筆すべきことでありましょう。
第1夜は2月3日に東京オペラシティリサイタルホールで開催される「百留敬雄ヴァイオリンリサイタル」で、世界で活躍する日本人音楽家シリーズの第3弾となります。
(制作:国際部・福井とも子)。今回の主役は、ベルギーを拠点に活動を続ける若手ヴァイオリニストの百留敬雄氏。百留氏は通常のヴァイオリンのみならず5弦ヴァイオリンも駆使するという気鋭の演奏家で、当演奏会ではエレクトロニクスも導入し、国内外の最新のヴァイオリン音楽をお届けします。
第2夜は2月15日に浜離宮朝日ホール・音楽ホールで開催される「西川竜太の啓く現代合唱の世界」です(制作:松尾祐孝)。西川氏は、合唱による新しい音楽創造を目指して、これまでに100曲を超える初演を手掛けた実績が高く評価され、2011年に第21回朝日現代音楽賞を受賞されましたが、この演奏会はその受賞記念演奏会となります。西川氏のタクトのもと、氏の近年の音楽活動にとりわけゆかりの深い5つの合唱団、ヴォクスマーナ、女声合唱団・暁、混声合唱団・空、男声合唱団・クールゼフィール、成蹊大学混声合唱団が出演し、日本現代音楽協会作曲家の新作・旧作を6曲上演します。
第3夜は2月22日にドルチェ楽器大阪アーティストサロンで開催される「平田英治サクソフォンリサイタル~Focus on saxophone! 」で、現音関西企画の第4弾にあたります(制作:南川弥生)。関西在住の現音作曲家の作品ばかりを集めたプログラムで、全曲世界初演という点も大いに注目です(うち1作は改訂初演)。
第4夜は3月10日に渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールで開催される「上野信一&フォニックス・レフレクション演奏会」で、私が制作を担当しております。
マルチ・パーカッショ二ストの上野信一氏と、氏の傘下のパーカッショングループ、フォニックス・レフレクションの若手メンバーの方々の演奏をフューチャーした打楽器作品の特集です。プログラムは日本現代音楽協会会員作曲家の作品だけでなく、中国作曲家の日本初演作品も含まれた大変興味深いものです。
これら4夜の演奏会では、同時代の作曲家と演奏家がともに創りあげていく新しい音楽世界を鮮烈に体感することができます。〈現代の音楽展2015〉「演奏家と創造の現在(いま)」に、どうぞご期待下さい。