「ペガサス・コンサート Vol.VII」リサイタル企画&主演者募集!

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フォーラムコンサートレポート

現音 Music of Our Time2024のフォーラム・コンサートは、11月28日と11月29日の2夜にわたり
開催されました。
今回は出品者のレポートをお送りいたします。

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山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”第1位受賞の言葉〜伊勢宥奈(ヴァイオリン)

 この度、山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”にて第1位という結果をいただく事ができ、本当に嬉しく思います。この“競楽”というコンクールは1945年以降の1〜6名までの編成の楽曲であれば自由に自分の魅せ方をプロデュースできる他に類を見ないコンクールです。

 私は学生時代から現代音楽に強い興味を持っていましたが、公の場での演奏機会がなく、競楽の存在を見つけた際『このコンクールに参加すれば公の場で現代音楽を演奏する事ができる!しかも素晴らしい審査委員の方々に聴いていただける!』と思い、応募させていただきました。

 いざ参加してみると楽器や編成、楽曲も本当に多種多様だと感じましたが、予選からスタッフの方々が隅々まで丁寧にサポートしてくださり(特にステージの配置など)本選でも照明の細部のこだわりまで要望を聞いていただき、参加者に寄り添って対応して下さいました。スタッフの方々のご協力に深く感謝申し上げます。

 予選では、いつか挑戦してみたいと思っていた西村朗先生の「無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番〈霊媒〉」、本選では、私がこれから現代音楽に取り組むにあたって自分の糧となり、挑戦にもなるIannis Xenakisの「Mikka《S》」、そして自分にとって現代音楽の入り口となり、今大会で絶対に演奏しようと決めていた細川俊夫先生のヴァイオリンのための「ウィンター・バード」を演奏させていただきました。それぞれの作品には本選での意気込みでも書かせていただいたような、テーマや特色、作曲家の個性が色濃く反映されています。

 自分にとって現代音楽を演奏することは、その作品の個性と向き合う事、作品の力を観客に伝えるためにどんな風に魅せるのか、舞台上では”伊勢宥奈”という殻を突き破って、何がなんでも作品のエネルギーを伝えなけばならない責任があると思います。これはマティアス・ピンチャー氏の言葉をお借りしたもので、「サントリーサマーフェスティバル2021 サントリーホール国際作曲委嘱シリーズNo.43 作曲ワークショップ」にてピンチャー氏が仰っていた、「作品が作曲者から奏者の手に渡った瞬間に、責任も奏者にバトンタッチする」という言葉で、強く感銘を受けたと同時に、私にとって生涯忘れられない言葉となりました。この言葉を常に心に留めて作品と向き合っていきたく思います。

 私が現代音楽という素晴らしい世界に足を踏み入れることができたのは友人達と先生方のおかげであり、私一人では今回の受賞まで辿り着く事ができませんでした。最後になりましたが、審査委員の先生方、日本現代音楽協会の皆様、そして現代音楽の世界へ導いてくれたすべての方々に心から感謝申し上げます。

▼山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”審査結果はこちら

第41回現音作曲新人賞受賞の言葉〜奥田也丸

松平敬(バリトン)佐藤まどか(ヴァイオリン)及川夕美(ピアノ)

 この度、第41回現音作曲新人賞および全音賞を受賞いたしました奥田也丸と申します。拙作がバリトンの松平敬様、ヴァイオリンの佐藤まどか様、ピアノの及川夕美様という素晴らしい演奏家の皆様により演奏していただきましたことを、心より嬉しく存じます。また、このような機会を賜りましたこと、事務局や全音楽譜出版社をはじめ関係者各位に深く感謝申し上げます。

 本選会に選ばれた御三方の作品を拝聴し、大変刺激を受けました。私は大学でも大学院でも声楽を専攻しておりましたため、古典的な歌曲の技法以外の声楽の使用法について考えたことがありませんでした。しかし、御三方の作品は、声楽を他の楽器と対等な関係で扱い、自由な形式で書かれていました。そのうえ、歌詞も誦文、意図的に平易で短く書かれた文章のリフレイン、ヴォカリーズなど、私では到底思い付かないような新鮮なアイディアに満ちており、非常に良い刺激を受けました。

 「現音」作曲新人賞という名の通り現代音楽の作曲賞ですが、拙作にはラヴェルや原始主義時代のストラヴィンスキー、メシアンの影響が随所に見られ、意図的に保守的な書法を採用しています。本作品の詩が上梓された1925年頃の音楽に少し合わせたという理由もありますが、最も重要なのは、音の鳴っていない瞬間を印象付けるために鳴っている音のインパクトを抑えたことです。

 採用した詩は萩原恭次郎の『死刑宣告』に収録された「ラスコーリニコフ」です。この詩に登場するラスコーリニコフは、ドストエフスキーの『罪と罰』の主人公であり、高利貸しの老婆を斧で殺害する人物です。音楽を奏でる際も斧を振りかざす際も予備動作が生じますが、両者にはその意義に大きな違いがあります。音楽の予備動作は一般的に「ブレス」として肯定的に捉えられるのに対し、斧の予備動作は気付かれると目的を果たせません。本作品では意図的に予備動作を減らし、不規則な休符や前触れのないテンポの変化、演奏しにくい音型などを通して、演奏者や聴衆に違和感や不快感を喚起するよう工夫しました。

 また、今回の作曲賞を通じ、多くの刺激を受けただけでなく、作曲家同士や演奏家の方々との交流が生まれたことも、大きな収穫でした。公正かつ質の高い作曲賞を実現された事務局や審査員の皆様に改めて感謝申し上げます。本作品は全音楽譜出版社から出版される予定ですので、楽譜を通じてその意図や構造を感じていただければ幸いです。また、この作品が再び演奏される日を心待ちにしております。

 今回新設された全音賞を最初に受賞するという大変な名誉を頂戴し、より責任を持って作曲活動に励む所存です。現代音楽の可能性を追求しつつ、多くの方々にその魅力をお届けできるよう、引き続き努力してまいります。この度は誠にありがとうございました。

 

▼第41回現音作曲新人賞審査結果はこちら

山下現代音楽賞 現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”第1位にヴァイオリンの伊勢宥奈さん

前列左から、酒井弦太郎(オーボエ)、白井奈緒美(サクソフォン)、前田啓太(打楽器)、伊勢宥奈(ヴァイオリン)、大野瑞季(ピアノ)、八島伸晃(ピアノ/やっしゅ〜ず)福本柊(ヴィブラフォン/やっしゅ〜ず)後列左から、村上聖(フルート)、渡辺俊哉日本現代音楽協会事務局長、茂木光伸(トロンボーン)、森垣桂一日本現代音楽協会副理事長、露木孝行一般社団法人日本音楽著作権協会常任理事、福士則夫審査委員長、杉山洋一審査委員、吉原すみれ審査委員、武田忠善審査委員、宇佐美裕大(打楽器)、降籏奈月(ピアノ)、和泉澤宏明(フルート)

戦後に作曲された現代音楽作品の演奏を競う「現代音楽演奏コンクール“競楽”」(主催:特定非営利活動法人日本現代音楽協会、理事長:近藤譲)の本選会が2024年12月22日(日)13:00より、東京都渋谷区のけやきホールに於いて行われ、伊勢宥奈(いせ・ひろな)さん(ヴァイオリン)が第1位となりました。1991年に始まり今年で16回目となる本コンクールは、今回より名称を「山下現代音楽賞  現代音楽演奏コンクール“競楽”」とし、特別協賛の医療法人葵鐘会山下守理事長の名を冠して開催しました。

福士則夫審査委員長による講評、結果発表に続いて表彰式が行われ、森垣桂一日本現代音楽協会副理事長より賞状と賞金が授与されました。

第2位は前田啓太さん(打楽器)、第3位は大野瑞季さん(ピアノ)。

審査委員特別奨励賞に、やっしゅ〜ず(ピアノ:八島伸晃 ヴィブラフォン:福本柊)が選ばれ、一般社団法人日本音楽著作権協会より表彰楯が贈られました。

また、聴衆賞には白井奈緒美さん(サクソフォン)が選ばれました。

 

山下現代音楽賞  現代音楽演奏コンクール“競楽XVI”

主催:特定非営利活動法人日本現代音楽協会
助成:一般社団法人日本音楽著作権協会、公益財団法人三菱UFJ信託芸術文化財団
特別協賛:医療法人葵鐘会
後援:一般社団法人日本音楽作家団体協議会(fca)

審査委員:
福士則夫(作曲・日本現代音楽協会理事/審査委員長)
杉山洋一(作曲・指揮)
高橋アキ(ピアノ)※予選のみ
武田忠善(クラリネット)
吉原すみれ(打楽器)
※50音順

日程:
予選 2024年11月21日(木)22日(金)
本選 2024年12月22日(日)

全36組参加 ※ソロも1組と数える。

会場:
けやきホール(古賀政男音楽博物館内/東京都渋谷区上原)

本選出場者(ファイナリスト)一覧はこちら

 

■第1位(日本現代音楽協会より賞状と賞金30万円)

伊勢 宥奈(いせ・ひろな)ヴァイオリン

山形県東根市出身、3歳からピアノを、4歳からヴァイオリンを始める。これまでに草津夏期国際音楽アカデミー、調布国際音楽祭、Archi in Villa Baruchelloなど国内外の音楽祭に参加しPaolo FranceschiniやDora Bratchkovaのマスタークラスを受講。これまでにヴァイオリンを犬伏亜里、木村恭子、鈴木亜久里、金川真弓の各氏に師事。東京音楽大学卒業。

本選演奏曲:
Iannis XENAKIS/MIKKA «S» pour violon solo(1976)
細川俊夫/ウィンター・バード ヴァイオリンのための(1978)

 

 

■第2位(日本現代音楽協会より賞状と賞金10万円)

前田 啓太(まえだ・けいた)打楽器

武蔵野音楽大学卒業。ドイツ国立カールスルーエ音楽大学へ留学。同大学大学院修士課程にて満場一致の最優秀の成績を得て帰国。2011年バーデン文化財団主催国際音楽コンクール「Kulturfonds Baden Wettbewerb」第1位受賞。第31回日本管打楽器コンクール・パーカッション部門第2位受賞。Studio N.A.Tより無伴奏打楽器独奏によるCD「I Ching」をリリース。

本選演奏曲:
松村禎三/ヴィブラフォンのために~三橋鷹女の俳句によせて~(2002)

 

 

■第3位(日本現代音楽協会より賞状と賞金5万円)

大野 瑞季(おおの・みずき)ピアノ

愛知県出身。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。市川市文化振興財団第1回即興オーディション優秀賞受賞。第2回ウィトゲンシュタイン記念 左手のピアノ国際コンクール 作曲プロフェッショナル部門入選。作曲を上田真樹、渡辺俊哉の各氏に師事。ピアノをJML音楽研究所現代音楽ピアノ演奏法講座にて中村和枝氏に師事。

本選演奏曲:
Luciano BERIO/Six Encores(1965-1990)
 Brin / Leaf / Wasserklavier / Erdenklavier / Luftklavier / Feuerklavier
Christophe BERTRAND/HAÏKU(2008)

 

 

 

■審査委員特別奨励賞(賞状と一般社団法人日本音楽著作権協会より表彰楯授与)

やっしゅ〜ず(ピアノ:八島伸晃  ヴィブラフォン:福本柊)

本選演奏曲:
山中惇史/SAKURA(2017)
福士則夫/シリカ ピアノとヴィブラフォンのための(1977)

 

 

 

■入選(本選演奏順)

白井 奈緒美(しらい・なおみ)サクソフォン

本選演奏曲:
武満徹/Distance(1972)
石田早苗/秋津の舞(2013)

 

酒井 弦太郎(さかい・げんたろう)オーボエ

本選演奏曲:
Antal DORÁTI/Cinq pièces pour le hautbois(1980-81)より 1. La cigale et la fourmie (アリとキリギリス)
西村朗/迦楼羅 独奏オーボエのための(2007)

 

 

■聴衆賞

白井 奈緒美(しらい・なおみ)サクソフォン