競楽XIII本選出場者紹介〜栗山沙桜里(ピアノ)

▼本選演奏曲
Edison DENISOV/Reflets(1989)
Einojuhani RAUTAVAARA/Piano Sonata No.2 “The Fire Sermon”(1970)

現代音楽に出会ってからいずれは出場をと思っていた競楽で、本選で演奏できる機会をいただけた事をとても嬉しく、また光栄に思っています。
1曲目はロシアの作曲家、Denisovの《Reflet》。様々なモチーフが、暗い水底から空を見上げた時に降り注いでくる光の様に色々な表情を見せ絡まりあいながら進行していきます。この作品の完成は1989年。ソ連崩壊目前の時代です。行き詰まる祖国で彼が降り注ぐ光のその先に見ていたのは果たして希望か絶望か。
2曲目はフィンランドの作曲家、Rautavaaraの作品から《ピアノソナタ第2番 The Fire Sermon(火の説法)》。釈迦による火の説法に触発された同名の詩がT. S. エリオットの“荒地”という長編詩の中にあります。しかし、Rautavaaraはこれとは意識的な繋がりはなく、良いものが崩壊し何か悪しきものが勢力を増していく構図と語っています。時代は1970年。“プラハの春”から2年後、揺れ始めた東欧に東西衝突への不安と不穏な空気が広がり出した世相を写したのでしょうか。
音楽とはその人自身の鏡ですが、同時に時代の鏡でもあります。故に、現代音楽は今を生きる私たちに、より直接的に語りかけてくるのではないかと思うのです。二人の作曲家の想いを皆様にお届けできればと思います。

◎プロフィール
桐朋女子高等学校音楽科、同大学を経てパリ国立高等音楽院に進学し、修士課程を首席で卒業する。その後エコールノルマル音楽院にて1年間現代音楽の研鑽を積む。現代音楽ピアノ国際コンクール(パリ)でグランプリ及びサラベール賞を受賞。その他国内外での受賞歴多数。室内楽フェスティバル(モントリオール)で現代曲プログラムを演奏。その他フランス、日本など各地での演奏会でも積極的に現代曲を取り入れている。ピアノを今川早智子、中村順子、有賀和子、Jacques Rouvier、Hortense Cartier-Bresson、Claire Désert各氏に、現代音楽をFrançoise Thinat氏、室内楽をMichaël Hentz氏に師事。

▼予選演奏曲
佐原洸/Buffer-groove(2017-8)
Pascal DUSAPIN/Étude pour piano N° 4 “Mikado”(1998-9)