現代音楽演奏コンクール“競楽X”ファイナリスト紹介
原田 真帆(ヴァイオリン)Maho HARADA
▼本選演奏曲
松下功/ヴァイオリン・ソロのための「マントラ」(2001)
本選で演奏いたします『マントラ』は、わたしの師匠である澤先生が初演した曲です。序-破-急の3つの部分からなる曲に合わせ、舞台には5台の譜面台が3種類の奥行きで配置されます。奏者はヴァイオリンを弾きながら歩いて移動し、すべての譜面台と向き合い、最後にはそれらに囲まれて弾きます。
この曲は空海が大陸から持ち帰った密教の修法「護摩業」をもとに作られています。護摩業は燃えたぎる炎を前にして真言(仏の言葉)を唱え続ける厳しい修行で、炎の温度は300度にも及ぶそうです。マントラとはサンスクリット語で讃歌・呪文といった意味で真言のことを指し、ここでは不動明王の真言をリズム・モティーフとして、煩悩の数と同じ108回刻まれます。
人生の長く苦しい時間の中で、一瞬でも苦悩から逃れたい──。そんな祈りが込められた『マントラ』。自分の心と誠実に向き合って、今のわたしなりの真言を見つけたいと思います。
今回演奏するにあたり、お話を聞かせてくださった松下先生、ご指導くださった澤先生に感謝いたします。
◎プロフィール
栃木県生まれ。3歳よりヴァイオリンを始める。2012年3月東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業、現在同大学器楽科1年在学中。澤和樹氏に師事。
▼第一次予選演奏曲
池辺晋一郎/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1・2楽章(1965)
▼第二次予選演奏曲
Witold Lutosławski/Partita/パルティータ(1984)